第377話
「それはそうです。私達はこの国からすれば救世主にも等しいのですから」
アリアが私に対して微笑みを向けてきた。
神衣してなくても分かってしまう。
厄介事なイメージしか思い浮かばない。
「……えっと……もしかして、それって私に関係がありますか?」
私は自分を指差しながらアリアに訪ねる。
アリアはとてもいい笑顔で頷いてきた。
「苦労したんですよ。この船ごと他国に教会と言えどそのまま入れる訳ありませんから。ですから少し営業致しました」
「ちなみに、どんな営業か聞いてもいいんですか?」
「はい!リメイラール教会には、四肢欠損すら直せる聖女がいます。そういえばあなたの所の王子様は目が見えませんでしたよね?もちろん目もパパッと治せたりしますけど、ちょっとお願いしたい事がありましてーと営業しました」
「そうなんですか。まぁ一人くらいなら問題ないですね。でも、それでよく戦争になりませんでしたね?恫喝じゃないんですか?」
「そんな事ありませんよ、帝政国は一夫一妻制ですから王位を継げる王子が一人と残りは全部女ですからね。快く承諾してくれました」
「……そ、そうなんですか。それは良かったです」
こんな法皇でこれからのリメイラール教会は大丈夫なのか本当に心配になってしまった。
心配と言えば……。
「ふと思ったのですけど、枢機卿が魔法帝国ジールへ逃げたと聞いてましたけどどうなったんですか?」
アリアは、両手を小さく叩いた後。
「そうです、忘れていました。以前、鉱山都市で聖女偽者事件がありましたよね?」
私はアリアの言葉に頷く。
「逃亡資金を稼ぐために仕組んだ事でしたので、コルクに処理させておきました」
「そうなんですか。それなら良かったです」
「まぁ貴女が刺されたと言う事で、偽聖女が仕組んだと町中に広がってコルクが現場に到着した時には変装した偽者聖女と枢機卿は虫の息だったそうですけどね」
アリアの言葉に私は唾を飲み込んだ。
アウラストウルスが起こした事件が丸ごと枢機卿たちに罪が着せられている。
本当ロクな事しないなと思いつつ、私は苦笑いした。
そうしてしばらく馬車に揺られていると巨大な建物が見えてきて馬車はアーチ上の入り口を通り抜けた後に停止した。
「ユウティーシア殿、ついたようです」
レオナは馬車の外に出るとすぐに戻ってきて私達に告げてきた。
「そうですか」
私は王子の治療という事を聞いていたのでてっきり王城なのに呼ばれると思っていた。
差し伸べられたレオナの手を取り私は馬車から降りる。
そして目の前の垂れ幕を見て、目を見開いた。
「アリア、これは一体……私が診るのは一人だけでは?」
目の前にはリメイラール教会と帝政国合同主催無料治療所と書かれた垂れ幕が大きく掛けられていた。
「……ユウティーシア殿、じつは……」
「えええ?教会の治療師や薬師の方で治せない方を全て治療する事を条件に真意の塔の使用許可と入国許可を取ったんですか?」
私は震える手で並んでる人達を指差しながら言葉を続ける。
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