第371話
「――――ッ!」
エンハスの言葉に、私は……。
―――くだらん、全てを守るために戦う?誰かを殺す覚悟もない者が何かを守ろうなど片腹痛いわ!
打ち込まれる拳が、蹴りが私の体を痛めつけていく。
それでも闇の力と風の力を持つ私達にはほぼダメージがないだからこそ……。
―――もうよい。貴様には失望した!まずは貴様の仲間から殺す!!
(ユウティーシア!彼女は貴女を……)
「分かっています。本当は彼女は望んでいることは……」
(なら、貴女のする事は分かっているのでしょう?貴女は言いました。自らを剣として盾として守る者になると!なら汚れる覚悟をしないと駄目です)
「―――やらないと、やらないといけないのですか?」
(ええ。それが彼女の望みなのですから!ユウティーシア、貴女にはそれが一番理解出来てるのでしょう?音素としてずっと彼女の近くにいたのですから!!)
エメラスの言葉に私は……目を見開く。
そう、結局……私は、自らが傷つく事が一番怖いんだ。
誰かをこの手で殺す行為。
その行為を恐れるあまり、私は……。
「そうですね……」
私は頭を上げてから手元に視線を向ける。
―――ようやく理解したか?貴様は人の可能性を見せると言った。だが貴様は自身が傷つく事を恐れ戦う事を恐れ常に戦いに置いて手加減をしてきた。
貴様のその行動は偽善に過ぎん!
誰かが守りたい。
誰かが傷つくのは嫌だ。
自身が傷つくのはいい。
だが人を殺す事で罪を背負う、その恐怖から貴様は逃げてるだけだ。
だから誰かを殺せると理解した時、貴様は引き金を引けなくなった。
アウラストウスのような者を殺せたのは、その場の雰囲気に流されたからだろう?
貴様は殺人という罪から目を背けてるに過ぎない。
まさしくその所業、人間そのものではないか!
貴様は人間の可能性を私に見せると言ったな?
ならばその可能性、今ここで私に見せてみよ!
エンハスの言葉を聞きながらも私は、氷ついたように動けずにいる。
(ユウティーシア、彼女はきっと終わらせて貰いたいのです。きっと彼女は……)
「分かっています!そんな事は……でも……でも……」
―――いつまで迷っているつもりだ?貴様の背後には守りたい者がいるのだろう?その力は何のための力だ?貴様は何のためにそこに立った?何のためにその力を得た?答えろ!
「……」
分かっている。
でも、それでも恐怖で体が動かない。
人に契約を持ちかけておいて結局は、一番戦う事に対して恐怖を抱き決心が出来ていなかったのは私だった。
私の意思に反して震える手で拳銃の銃口はゆっくりとエンハスに照準が向けられていく。
「待ってください、エメラス。まだ話が終わってないんです」
そして私の言葉と同時に2発の重力子弾が打ち出される。
その重力子弾が、近づいてくるエンハスの体に吸い込まれていくとエンハスの体は粉々に砕け散った。
そして、砕けた中から私そっくりの女性が現れ地面に向かって落下していく。
私は彼女を抱きしめてゆっくりと地面に降りてから下す。
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