第369話
―――無駄だ、輪廻を司る者には魂の選定が存在する。その者は罪を犯してきたのだろう?
なら助かる可能性はない。
私が処断したのだから、その者の死は確定している。
私はエンハスの言葉に頭を振る。
―――理解しているのだろう?何故、納得しない?何故、貴様の心は折れない?何故、立ち向かおうとする?
脳裏に響くエンハスの音は、とても苦痛を孕んでいるように思えた。
エンハスの語る言葉は自身の憤りを含ませた物に思えた。
だからこそ、私は……。
「エンハス!私は絶対に、貴女を止めます!!」
私は、握っていたエメラスの手を強く握りしめる。
「エメラス、仲間を部下を守りたいなら私に力を貸してください。
一緒に戦ってください。
貴女が本当に守りたい物があるのなら。
貴女が本当に助けたい人がいるのなら。
誰かを守りたいと思う気持ちが本当なら。
私と契約をしてください。
理不尽な運命に立ち向かう力を得るために。
誰かを守るために正しいと思うその思いを実現させるために」
私の言葉を聞き、一瞬の迷いもなくエメラスは力を振り絞って私に向かって頷いてくる。
「エンハス!貴女に見せてあげます。人の可能性を!」
私は心の中で神衣と叫ぶ。
私とエメラスの間で心のバイパスが形成される。それと同時に世界が時が止まる。
停止した時の中で……。
「エメラス、貴女はもう私の心の内が見えると思います。
そして私にもエメラスが行ってきた数々の行いを見る事ができます。
最後に聞きます。
今から行う神衣契約は、自分の利益の為ではありません。
誰かを守るために、理不尽な運命から力無い人を守る為に、自らが盾となり剣となり誰かを守る為の力です。それでも、私と共に戦えますか?」
「わかってるさ。クサナギ、アンタの記憶も見たんだ。
それに私の部下達との付き合いもアンタは見たんだろう?なら何も言わないさ」
エメラスの言葉に私は頷く。
「……なら、ここに契約と制約と盟約を交わします」
私は透き通った両手をエメラスに差し出し、エメラスも透き通った両手をこちらへ向けてきた。
私はエメラスの両手を握り彼女も私の両手を握り返してきた。
二人で頷きあい、契約の言葉を述べる。
「「神霊融合!!」」
停止した時が、世界が夜の帳が下りてくる。
それに伴い、私とエメラスの意識を含めた全てが音素に変換されていく。
闇が集い空間は漆黒に染め上げられた。
周囲の精神エネルギーを糧とし私とエメラスの音素が重なり合い共振し増幅し合う。
そして体と器が、神器が編み上げられていく。
砕けた漆黒の闇の中から現れた姿は、ユウティーシアを成長させた姿であり腰まであろうかという漆黒の髪をツインテールに纏め上げていた。
開かれた眼はユウティーシアの特徴をもつ黒い瞳をしており腰には2丁のグロックを備えている。
ユウティーシアとエメラス、2人の神衣化が完成したと同時に停止していた時間が動きだした。
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