第368話
―――あと21人か。
此処にいる私を含めた全ての人影を見て語ったエンハスの声が、この場所にいる全ての人間の頭の中に鳴り響く。
私は先手を取らせないように転移魔術でエンハスに近づくが、すでにそこにはエンハスはおらず誰かの息遣いが聞こえてくる。
―――あと20人。
私の足元に、胸を貫かれた血まみれの男がエンハスより投げつられてくる。
「エンハス、それでも貴女は……神を語る資格があるのですか!?」
私は、すでに息絶えた人を見た後に震える声で叫ぶ。
―――語る資格だと?ゴミのような物にどのような価値があると言う。
瞬く時しか生きられず他者を貶め辱め自己の愉悦を追い求める物にどのような価値があると言う?
貴様は言ったな?人とは知識を継承すると。
だがその結果、起きた事はなんだ?
自己の利益だけを追求した結果、より多くの命を奪いつくし歴史を改竄し全てを無かった事にする。
そのどこに、価値があると言う?
価値が無い物に、価値が無い物を処分することに対して語る資格など必要なかろう。
「それでも……」
―――貴様も気が付いてるだろう?
人間の本質は悪だ。
他人を踏みつけ自らを正当化し自ら愉悦を求める。その行為こそが悪に他ならないだろう?
貴様も長い年月、人間を見てきて分かっているだろう?
宗教戦争も経済戦争も戦争も全ては人間の悪しき部分を曝け出してるにしか過ぎない。
我々、神は貴様ら人間を見限っているのだよ。
人を殺して神にその罪を着せ自己を正当化する道具とする。
それでもまだ貴様は、私と戦うつもりか?
人間を滅ぼす事をまだ止めるつもりか?
「―――たしかに貴女の言うとおり、人が駄目だと言う事くらいは理解しています。でも、だからこそ人は少しでも前進しようとしているのではありませんか!」
―――貴様が言ってるのはキリスト教という虐殺集団の事か?何億人も2000年以上もかけて殺して殺して殺して殺して殺しつくして、命乞いをした人間も殺し、老若男女差別なく殺し自分達の権力に邁進したゴミ共の事か?ヤハウェと言う神に全ての自分達が犯した罪を擦り付け、罪から目を逸らし自分は悪くない、相手が悪いと良い訳をし、偽善を行ってるゴミ共の事か?
そのような物は偽善だ。
自らの行いを理解せず自らの罪を直視せずボランティアだと?
そんな行いが誰かの助けになるなど勘違いも甚だしい。
「それでも……」
私はエンハスを見て彼女の表情を見て気が付いた。
だからこそ……。
「……ク……ギ……クサナ……ギ」
力の篭らない掠れた声で私の足に手を添えて……。
「……みんな……を……ぶかを……た……す……」
……口元から血を垂らして必死に語りかけてくるエメラスがいた。
エメラスにも守りたいモノがあると違う、誰でも守りたモノがあるんだ。
私は、座りエメラスの手を握る。
そして治療魔法を発動させる。
でも体が治っていく様子が見られない。
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