第364話

「たしかに、それなら……」

 そう、神代技術はあくまでも物理学を応用した技術。

 エアリアルブレードの特性は空間を繋ぎ切り裂く事。

 それは魔術や魔法や神術でもない。

 人類が長い年月をかけて作り上げた科学と言う技術。


 空間の裂け目から私の騎士であり現在の勇者であるレオナ。

 リースノット王国第一王子であるクラウス様。

 元聖女にして現法皇であるアリアもその姿を現した。


 私は4人の顔を見た後に……。


「敵は、こちらの世界の力を吸収し力に変えます。それにより全ての魔術、魔法、神術は、あの光龍には吸収されてしまい通じないと思います」

 私は、エンハスと戦ってきた事を頭の中で整理しながら対抗策を考える。


「こちらの打てる手立ては、神衣化を連続で行い光龍の力を殺ぎつつ、倒すしか方法がありません」

 私の言葉に皆がうなずいてくれる。


「ならまずは俺からだな?」

 コルクが私に手を差し出してくるのを見て私は頷きながら彼の手を取る。


「皆さんは力をためておいてください。最大まで高めた一撃一撃を相手に叩き込んで倒します」

 コルクの手を強く握りしめ私はコルクを見上げる。


「「神霊融合」」

 私とコルクの言葉が重なりあい周囲の時が止まる。

 時が時間が空間が発生した焔により空間ごと赤く燃え上がる。

 私とコルクの体が焔の炎により音素に還元され周囲の、エンハスが支配下に置いていた精神エネルギー以外の力を取り寄せ吸収し力としていき体を器を構成していく。

 

 時の止まった世界で巨大な炎の渦が余波を巻き上げ周囲を焼き尽くしていく。

 舞い上がる炎の中から現れたのはユウティーシアたる私を20歳まで成長させた姿であり髪と瞳の色はコルク・ザルトと同じ赤い色を備えていた。

 着ているドレスは真っ赤に染め上げられおり所々、赤く光る金属で装飾を施されている。

 背中には2枚の巨大な赤く燃え上がる翼を生やしており右手には、3メートルを越す炎を纏う巨大な槍をその手に所持していた。

 私達の神衣化が解除されると同時に世界は色を失い時を刻みだす。


―――誰だ?貴様は?


 エンハスから見ると突然、私が現れたと思えるのだろう。

エンハスが光弾を作りながらも困惑しているのが私たちにも分かる。


「コルク!力を借ります。肉体の制御は任せました」

(分かった)


 私は、コルクの力であり属性力"火"を扱う事に専念する。私がコルクの力の源であり魂の源でもあるその火に触れると火は力を増していく。火は炎となり炎は煉獄となる。

 そして私は理解した。

 炎に力を与えることが出来るのは風の力。

 私の……ユウティーシアとしての本来の力、魂の力は風。まさしく音素たる私にふさわしい力。

 私は自分の力を自覚した所で気がつく。

 右手に携えていた槍の炎が変化し赤い雷光に変化していた。

 

 やっと理解した。

 レオナと初めて神衣化した時は、レオナの神器”雷切"には紫電が纏われていたのに力が引きあがった時のアウラストウルスと戦った時には、雷でなく氷のみが纏われていた。

 それはきっと、私の中には自らの属性をコントロールする力がなかったのだろう。

 私が、心象世界で本来のユウティーシアに力を借りれるようになった事で魂が本来持つの力が制御できるようになった

 以前、風の力が使えていたのは神核がその力を引き出していたのだろう。

 でも今はもう自分でその力がコントロール出来る。

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