第363話

――――もうよい、消えろ。


 空から光龍エンハスの攻撃神術が、私が立っている大地付近に降り注ぐ。私はすぐに転移で距離を置き離れると降り注いだ光の槍が接触した地面が巨大な爆発を起こし無数の岩石が高速で周囲に散る。そして、復興途中であった建物を破壊していく。


 私は、自分に飛んできた岩石を重力魔法を使い地面に落下させ防ぐ。


―――転移か、人間にはできないはずだが。そうか貴様の体のベースはこの世界の人間の物であったな。


 彼女は、俺の体がどのような状況に置かれてるのかまったく理解できてないようだ。

私は、高速で術式を空中に描いていく。


「万物に干渉す……生み出せしは!?」


 途中で周囲の精神エネルギーが掻き消える。


―――くだらん。私は輪廻を精神エネルギーを管理してきた者。あたり一帯の精神エネルギーを従属させることなど訳はがないわ。


 天より降ってくるエンハスの声に歯軋りをした。

 精神エネルギーは、魔術と魔法の源となる力。それを奪われたという事は、こちらの空間魔術に特化した先史文明の魔術と現代魔術が使用不可能にされた事を意味する。

 肉体も再生は出来るが実質的な死を迎えてる以上ミトコンドリアを使った肉体強化や肉体武器変化も使えない。

 

 すぐにその場を飛び退く。


 飛び退いた場所に巨大な光の柱が立ち上り大地を消し去っていく。


―――よい、よいぞ。この世界!全てが精神エネルギー出来ているのではないか!この世界の力を私がモノにすれば愚かなゴミ共も一掃できよう。


 光龍エンハスの声が頭の中に直接響いてくる。

先ほどまでの怒りが嘘のようにエンハスの声には愉悦が混じっている。


「それは、この世界を滅ぼすということですか?」


―――そのとおりだ。貴様が神核を破壊した事で私の計画が台無しになったと思ったが……思わぬ拾い物であったわ。


「そんな事はさせません!」

 私は、背中に背負っていたループオブロッドを取り出して両手に持ち構える。

 エンハスから放たれた光術が私の体を傷つけていくけど、肉体は粒子レベルで再構成されていき修復されていく。


―――なんだ?神術か?だがそのような気配は一切感じない?何故生きていられる?


 エンハスは私を見て驚いている。

 私が託されたループオブロッドの特性は粒子再生技術。それは魔術や魔法や神術なんかじゃない。

 これは人類が人間が多くの時間をかけて作り上げてきた化学という魔法に迫った技術。


「これは……神秘学なんかじゃありません。長い年月、多くの人々が知識を継承し受け継ぎ作り上げ開発してきた物です。それが科学と呼ばれる技術、それが……」


―――たかが数十年の寿命しか持たぬ脆弱で矮小な人間が何を言う。神というモノに縋り、都合のいい時だけ神を崇め、都合が悪くなれば悪神と言うそのような者が作ったものなどたった今、消し去ってくれるわ!


 エンハスが支配下に置いていた周囲の精神エネルギーだけではなく大地や木々や全ての存在から精神エネルギーをかき集めていき巨大な光弾を作り上げていく。


「間に合ったな!」

 声がした方へ視線を向けると横に元勇者であるコルク・ザルトが現れた。

 そしてコルクの傍には、空間に裂け目が存在している。

 

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