第362話

「クサナギ、貴様が何故転移を!?」

 神術を編みこんでいるエンハスの顔に向けて私は上段回し蹴りを打ち込む。

 彼女の頭が後方に弾かれ神術が解除される。


「ぐうううううう。た、体術だと!?」

 私が魔術とか魔法で対抗すると思っていたのだろう。

 エンハスの周囲には私が魔術か魔法を使った際に反応する神術がいくつも見てとれる。

 どれもかなり強力に見えるが……、

 三下と言えど神相手に魔術戦を仕掛けるほど、そこまで戦闘経験は浅くない。

 私は、極小の魔力を使い空気の足場を作りながらエンハスに肉薄する。


「神殿流体術!」

 聖女アリアと神衣した事で得た徒手空拳で、エンハスの体を打ち据えていく。

 そのたびにエンハスの体が揺れる。

 10発近い打撃がエンハスの体に打ち込まれた所で、エンハスは私から距離を取った。


「どう言う事……体術を使ってくるなんて……そんなのは戦いのセオリーではない!」

 力説してくるが、これはスポーツや試合ではない。


「戦いのセオリーと言われても……私を殺すと言ってきた人に真正面正直に戦う人は居ないと思いますけど?」

 私の言葉に、エンハスの顔が真っ赤に染まる。

 

「ふざけるな!少し優勢になった程度で頭に乗るではないわ!もうよい、貴様だけを殺そうと思っていたが仕舞いぐふっうううう」


「すいません、話してる間……とても隙だらけだったのでボディを殴ってしまいました」

 ついでに蹴りも入れて上空から叩き落とした。

 甲高い音を立てながら落下していくエンハスを追うように私は落下を開始する。

 すると地表すれすれでエンハスは落下を止めたようであった。


「おのれ、くさなごふっ!」

 追うように落下してた私の蹴りがエンハスの顔面に突き刺さる。

 空中に停滞していたエンハスは、そのまま落下し地面に激突し砂埃を立てた。

 

 私は止めを刺すために彼女が落下した場所へ近づいていく。

 すると突然、体中に感じる圧力が増す。

 その場から飛びのくと極光が私が立って居た場所をなぎ払った。

 滞留していた煙が吹き飛ばされた場所から姿を現したのは20メートル近い巨大な光龍であった。




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