第359話
「私が作られた存在だったとしても人の営みは美しいと思った。いけないのか?それを守りたいと思ったら……誰かを守りたいと思うことは罪なのか?たしかに貴女の言う事は正しいのかも知れない。でも……」
誰かを守る為に誰かが犠牲になる。
そんな世界はとても悲しい事。
でも、私はそれでもいいと思った。
でも、それで悲しい思いをする者がいるなら。
「私は、私のためにそして誰かを守る為に戦う!」
「そうですか……」
「決して、自分自身に負けたりなんてしない。それが私がユウティーシア・フォン・シュトロハイムでいる為の意味なのだから」
「いつから気がついていたのですか?」
「分からない。でも、自分自身が分からない人なんていない。
貴女の正しさはただ正しいだけだ。
そんな物は私には必要ない。
だからこの世界から出る方法が貴女を倒すしかないなら私は貴女倒してこの世界から出る」
「そうですか。ようやく他者の痛みが理解出来、前に進む心を持ちましたか。それで貴女はどうするのですか?」
「決まっています。私が消えて誰かが傷つくのなら、そうならない方法を見つけて世界を救うだけです」
そこでようやく彼女は私に微笑みかけてきた。
それと同時に砂嵐が舞う砂漠の世界は一面が緑と花が咲く世界に変わっていく。
空も淀んだ夕日ではなく澄んだ青空に変わっていく。
「やってみなさい。ユウティーシア・フォン・シュトロハイム、貴女の存在の意義を見せてもらいましょう」
私の前で、彼女は白い彫像となって砕け散った。
そこで意識が暗転し
「戻ってきたようだな、ユウティーシア・フォン・シュトロハイム」
荒野で私を待っていたのは、私を見定めるように見ている男ロウトゥであった。
[フッ……ハハハハハハッ。なるほど……そういうことか」
私を見ていたロウトゥは笑い出すとすぐに真顔になり鋭い視線を向けてきた。
「何の為にここにいるのですか?」
私は彼女に語りかけるが……。
「何の為か……貴様に計画を邪魔された事への報復だ!」
彼女は私に宣言すると先ほどまでとは比較にならない程の速度で、一瞬で私の目の前から消える。
私は両手に持っていた杖を回転させながら後方を振り向く。
迫ってきた剣閃は2つ、それらを遠心力を乗せた杖で弾きながら距離を取る。
今まで見えていなかった相手の動きが手に取るように分かる。
「今までは手加減をしていたと……そう言う事か?」
彼女は私に話しかけてくるが、今までとはまったく違う……そうじゃない。
これは、今まで私が感じてた力。
体内に魔力が泉のように溢れ出していくのを感じる。
世界の理が大気の動きが世界を編む粒子が全て理解出来る。
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