第357話

―――――― 一度、夢を見た。


 誰かを犠牲の上に作られる世界。

 全てが犠牲になり作られた世界。

 どちらも間違いでどちらも正しかった。

 誤りなんて存在しなかった。

 ただ、望んだ結末ではなかった、ただそれだけだったのです。

  

「召喚、転移そのどれもが本当は間違っている。

何故ならそれは歪んだ時の営みなのだから、だから決して誰も救われないし報われない。

かならず誰かに犠牲を強いる事になる。

それがクサナギでありユウティーシア貴女なのだから。

ヤハウェはそんな犠牲に成り立ってる世界を滅ぼそうとしてるに過ぎない。

彼女も囚われているのですよ。

犠牲の上に成り立つこの世界の在り方に、そして貴女自身も」


「ならどうすればいいんですか?」

 私には、彼女の言ってる言葉が何故か理解出来ないのに理解できてしまった。

 彼女の言う事は、唯一つ。

 誰もが犠牲にならない世界を作れと言う事だった。

 でもそんなのは絶対に出来はしない。

 何故なら……。




「何れ消える運命だからですか?だから答えを出せない?だから己の正義を他者に押し付ける?私は死んでもいい?でも、貴方が消えればユウティーシアも消える。そうすれば本来のユウティーシアは生まれる事はない。だから貴女の理想はもう意味を成さない。それでも貴女は自分を大事にしませんか?」

 私は彼女の声を聞いて唇を噛む。


「たしかに、貴女の消滅は避けられないのかもしれない。でも、貴女は世界を正す事が出来る守護者です。破壊者である彼女とは違う……」

 彼女はようやく私の方へ視線を向けてきた。


「正義とは何ですか?本当の正義とは……」


「それは……」


「そう、答えは出ない。正義とは人の数だけ存在する。だからこそ、貴女には知っておいてほしかった。この世界の成り立ち、己の存在全てをその上で貴女がどのように結論を出すのかどのような結末を導きだすのかそれを私は知りたい。さあ、見せてください」

 彼女は、華麗に装飾された細剣(レイピア)を作り出し、その場から間合いを詰めてきた。

そして放たれた剣線は私の頬を掠った。


「――――――っ!?」

 痛みが走った。

 手を当てれば手には血がついていた。


「どうですか?ここは心象世界でありユウティーシア、あなたの心の中です。」

 彼女の言葉に私は声を失った。


「驚きましたか?この砂塵舞うどこまでも砂漠が続くこの世界が貴女の世界その物なのです。

貴女は自分に対して絶望し、自分自身を切り捨て他者のために生きてるに過ぎない。

誰かの為に有れと誰かを守る為に有れと自身を切り捨てたくせに、誰かを守るなんて傲慢にも程があります。

誰かを救いたいから救う、その為に自分を切り捨てて生贄にして救うそんな物のどこに大儀があるのですか?」

 私は彼女からの剣閃を受け流しながら少しづつ傷つく体と砂の上に散っていく血を見ながら……。

切られた体から滲んだ血が服を赤く染めあげていく。


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