第343話

 そして場面は切り替わり、辺り一面が真っ白な空間に私の身は投げ出された。


「そこの娘、時の開闢を見たのか?」

 私の目の前にはヤハウェが存在していた。

 彼女は私を注視しながらも一定の距離を保ったままで居る。


「あなたは一体?」

 私の言葉に彼女はニコリと微笑む。


「ふむ、我を作り出した要因を作ったあの愚かな男ですら我を見た時にはあれだけ動揺していたというのに娘よ、貴様には神の気に対して抵抗力があると見える。

なるほど、貴様は我と同じ存在である者か、それなら理解はできると言うもの。


先ほど、貴様は私の事を尋ねたな?誰であると……。


我は誰でもない。

我は等しく全ての万物、あまねく生物の中に存在し顕在するモノ。


即ち想念が実体化したに過ぎない。

我が力は、想念の力に比例する。

その力を持ってして知在りし者は我を神と崇める。

まことに愚かとは思わんか?自分で作り出した偶像を神を崇めるその傲慢さ無知さ業の深さ。

我が崇高だと、どの口が言う?

我が崇高だと、どの考えが言う?

我が崇高だと、どの思いが言う?

下らんと思わぬか?

人の悪意、絶望、妬み、嫉妬、強欲、慢心、欲望それらで作り上げられた、我が崇高などと、ありえる訳がなかろう。


そうは思わぬか?我とは対極の感情により作られれし音素にて草薙雄哉にしてユウティーシアよ」

 私の見てる前で、ヤハウェが楽しげに残忍そうに笑う。

 それと同時に私の体が震える。

 彼女を倒せと叫ぶ。


「なるほどな、貴様の力の源はまだ完全ではないのだな。

ならば、我と戦う前には完全にしておくのだな。

我は何れ全ての想念で作られし神々を従え、この宇宙を虚無へと戻す。

貴様がそれを止めるならば我を討滅してみせよ。

貴様の事は、地球で待っているとしよう」

 それだけをヤハウェは告げると姿を消した。



「……ユ……ア……ティア……ユウティーシア!」

 目を覚ますと目の前にはクラウス様が立っていた。

 クラウス様の姿も私の姿も透けていた。


「クラウス、ここは?」

 私の言葉に彼は分からないとだけ告げてきた。

周りは何もない暗い空間で私とクラウス様はゆっくりと暗闇の中を降下していく。

そして足がついた場所は見た覚えがある場所であった。

そこを守護するようなコボルト達の姿は見ることは出来ないけど、そこはたしかに環境開発実験センターであった。


「ユウティーシア!」

 突然、走り出した私の背中にクラウス様の声がかけられる。

 けど、それを聞いてる余裕はなかった。私は焦燥に駆られるように環境開発実験センターの扉を開き中に入っていく。建物の中は私が依然に入った時よりもかなり綺麗でまだ使われてる痕跡が見てとれる。


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