第342話
「―――そ、そんな……」
イースラーが取り去った布の下から現れた巨大で透明な容器の中には一人の女性が浮いている。その女性は長い金色の髪を持った女性であった。
「……なぜですか?所長。何故……彼女をヤハウェをこのような姿に……」
ユダの視線は所長であるイースラーを射抜くように向けられているが、彼はその視線を受けながらも一言呟いた。
「決まっているだろう?復讐だからだよ。君が殺したイエスは私の息子なのだからな。人の運命を変えたのだ、やり返すのは当然だろう?だが、普通に殺すとつまらない。だから実験に使ってやろうと言うのがせめてもの救いだ。人類のためにその命を捧げられるのだ。文句はないだろう?」
イースラーはそれだけを告げると研究室から出ていこうとする。
「きさまあああああああああ」
ユダが手に持っていたハサミで振り向いたイースラーの胸元を刺す。刺された反動でイースラの体は近くのコンソールパネルにぶつかり止る。
「おろかな……所長の私を殺したところで実験素材として加工されたヤハウェはもう戻っては来ないというのに……」
そこでイースラーは力尽きたように倒れ息を引き取った。
イースラーを刺したユダと呼ばれた男……アルファは何度も浅い息を繰り返しながら血まみれになった自分の手を見た後に震える手でハサミから手を離した。
――――――実験を開始します。被検体はヤハウェになります。
アルファは突然、響き渡る声に顔を上げると自らが愛したヤハウェが入れられた試験管に視線を向ける。
――――――対象者の肉体を除去します。
「やめろ!どうするつもりだ!!」
アルファは、イースラーの死体をどかすとコントロールパネルの実験開始データーが高次元生命体への実験開始がONになってるのを確認した。
「ま……まさか……」
アルファの見てる前で愛した女性の体が分解されていく。それを見せ続けられたアルファの目は信じられない者を見るかのようなものであった。
急いでコントロールパネルで実験中止のコマンドを打ち込むが、巨大なエネルギーが発生したとキャンセルされてしまう。
そしてコントロールパネルの表示が急に切り替わり、考えられないエネルギー数値を導きだす。そのエネルギーは超新星爆発に匹敵する程のエネルギー。
驚きの表情のまま、アルファは再構築されていく女性の体を見る。
最初は、疑心暗鬼だったその表情は女性の体が再構築されていきその姿の全貌が見えるたびにその表情は変わっていく。
「我は、貴様ら人間の心が作り出した者だ。丁度よい、この娘の名前で頂くとしようか?我が名はヤハウェ、人間の狂った思想が作り出した作られた神である」
そこには、アルファが愛した女性の姿のままで。
人間の持つ、深い業や負の感情で作り出された……本当の壊れ狂った神が世界に降臨したのだった。
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