第319話
「そして大事に誰かを思う本当の意味を」
誰かを大事に思う気持ち……それは……。
「もう分かるはずだよ?お前は、人と人との心の掛け橋となるために作られた音素なのだから、このアガルタの世界でどれだけの人がお前を大切に思っているのか分かるだろう?」
僕は、自分の存在を認識し手を伸ばした。
僕の死を悲しんでる人がたくさん居る。グランカスもパステルもアリーシャも奴隷商人達も僕が海洋国家ルグニカで出会った人や奴隷から解放された人達が皆、僕を死を悲しんでくれてる。
アルゴ公国もヘルバルト国も城塞都市ハントの皆もアリアもコルクもリースノット王家の皆もヴァルキリアス国のアリス皇女殿下も思ってくれてる。
僕は部屋の中の人達を見ていく。
いつも怖くて相手にしてくれなかったお父様の心に触れる。お父様はずっと僕を大事に思ってくれていた。ただ、それが届かなかっただけだった。お母様も僕を本当は大事に思ってくれていた。僕が旅をしてる間ずっと心配してくれていて食事も手に付かなかったくらいだ。そしてクラウス殿下、彼は僕をずっとずっと一途に愛していてくれた。そうか、僕は祝福されて望まれて生まれてきたんだ。
僕は教授を見上げる。
「決心はついたようだね?」
僕は教授の言葉に頷く。
「お前はいくつか勘違いをしているようだが教えておく。まずお前やレオナを駒としたのは本当の意味での神ではない。神は基本不干渉な存在だ。もし干渉してくるならそれは神ではない。そして、やつらは一つ重大なミスを犯した。それはお前を駒として利用し草薙雄哉の知識をベースとしたことだ。草薙雄哉の知識を思い出した今なら分かるだろう?」
僕は力強く頷く。
「やられたらやり返す!それが草薙雄哉の真実だ。
次にあくまでもお前のベースはユウティーシア・フォン・シュトロハイムだ、お前は性転換したと思ってたようだが実際は違う。
男の知識だけを持っていたに過ぎない。
本質は女なのだよ、だから出来損ないの精神の調停者ごときが余計な感情を生ませないように男として精神構造を作り変えていたのだろう。
こちらかのアクセスを散々邪魔してくれていたからな」
「さて、ここからは選択だ。このまま消えて無くなるかそれともやり返して世界を元に戻して消えるかどちらを選ぶ?」
どちらにしても僕の存在は消えてしまうのか……。だったら最後まで足掻いて足掻いて道ずれに滅びるのもいいかも知れない。ここはやはり草薙雄哉の知識からなんだろうと思う。
「うむ、音素が感情を持つなど私ですら想定外であったがこれは間違った時を正せる絶好の機会かも知れないな」
草薙雄哉は、そういうと僕に教えてきた。
それを感じてようやく僕は本当の意味を理解した。
僕が使っていたリメイラールが作ってくれた神衣は完璧じゃなかった。違う、僕が完璧にしてなかった。人を理解すると言う心をもっていなかったから感情を持っていなかったから本当の神衣を引き出せていなかった。本当の神衣は神気なんて必要ない。
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