第312話
シュトロハイム家の歴史は、建国から3000年続くリースノット王国よりも長い。一説によれば初代当主はアレルと言う若者だったそうだ。今となっては本当かどうかも分からないが初代当主アレルはハンターとしてドラゴン討伐の仕事をしており3人の仲間と共に世界を救うための旅をしていたそうだ。3人の仲間は、一人が黒き髪をした異界から来訪した大魔術師、もう一人は癒しを得意とする僧侶、そしてもう一人は名を削られた少女。
この4人は、世界を救ったという。これは、教会が封印指定するはずの話であったが代々シュトロハイム家の当主にのみ語り継がれてきた伝承。そしてこの伝承には続きがある。「神代の知識を持つ女子が生まれた時、世界は大いなる災厄に見舞われると同時に転換期を迎えるであろう。その者はとても幼く弱く傷つきやすく誰よりも純真である。その子供には人を愛する気持ちと本当の強さを与えてほしい」と大魔術師草薙雄哉が、作り残した石版に文字が書き込まれていた。
まさか、それが現実になろうとは思いもよらなかった。
最初から娘のユウティーシアは、昔からとても聞き分けのいい子供であった。人に言われた事でも嫌なそぶりを見せずに頷き取り組み、必要以上の結果をつねに出してくる。私もエレンシアもその事に違和感は抱いていた。
子供なら誰もが持つ好奇心を持つ事、それがユウティーシアには欠けていた。
将来は、王妃となる事が宿命付けられていた娘には国のために自らを殺して尽くすのは、それで良かったのかも知れない。そう私たちは思い込んでいた。
ある日、ユウティーシアが婚約発表を行う夜会から姿を消したと報告があった。娘は、人の潜在能力の限界を超えて力を与える事が可能な白色魔宝石を作ることが出来た。それはクラウス殿下やこの私、バルザック・フォン・シュトロハイムが作る事が出来る白色魔宝石とはまったく別の物であった。
私とクラウス殿下がどんなに魔力を注いでも娘の白色魔宝石には遠く及ばない。私達が作れるのは、人が消費した魔力を回復させる物と潜在能力を引き出す物だけだ。人の能力を超えた力を与える真の白色魔宝石は娘でしか作る事はできない。
ユウティーシアが、夜会場から姿を消したと聞いて私は内心、嬉しかった。娘にも感情があったのだなとそれと同時に娘がアリス皇女殿下と話してた内容が書かれた書簡を見て娘は何か重大な問題を抱えてる事に気がついた。
本来ならリメイラール教会が封印指定するはずの神代時代の知識を、あろうことか娘が語ったというのだ。それも細胞と言う禁忌に触れる内容をだ。
教会はすぐに娘の引渡しを求めてきた。
それはあらかじめ用意されていたかのように聖女アリアと勇者コルクが、リースノット王家に直接尋ねてきたのだ。だが娘はすでに行方不明になっており、どれだけ探しても見つけることが出来なかった。
一度も館から出した事が無いにもかかわらず、娘の足跡を追う事が出来ない。そんな日が続いた頃にリースノット王都警備隊より娘の居所が分かったと報告が上がってきた。娘は、ある一家の所に身を寄せてると言う事であったがその身柄を確保する事はできず取り逃がしてしまった。
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