第295話
「バズーさん、町の北側は前からこんな物なのですか?」
俺の質問にバズーがそんな事はないと首を振ってきた。
「前はそんな事ありませんでした。疫病が広まってからです、最初は体の指先が動かし辛くなってそのうち震えがとまらなくなるのです。
聖女様を迎えにいった兵士の方と入れ違いに来られた聖女様が来られてから多少は違いますが、聖女様が配られる薬は、とても高価で呑んでる間は体の痛みから解放されるようなのです。
ですが切れてしまうとあのようになってしまうのです」
「な、なるほど……」
なんか、グレーゾーンな商売してる聖女だな。そんなんで大丈夫なのか?よく領主は許可したよな……。まぁ俺にはあまり関係ないからいいけど……。
「それにしても教会が認めた勇者一人だけに発行される冒険者ギルドカード。ダブルSランクの方はすごいですね。こんな風景を見ても眉一つ動かされないのですから、尊敬します!」
あれ?レオナっていつの間に勇者になってたんだ?しかも一人だけって……コルクは勇者やめたのか?
「ただ……」
「――ん?」
「いえ、なんでもありません」
何でもありませんとバズーは俺に語ったが、バズーがただという後に小さく呟いた言葉。勇者様がいるということはやはりあの聖女は本物と言うことかという悲痛な独り言だけは聞き逃さなかった。
城塞都市ハントの北門を出て一時間ほど歩くと
「ここです、ここでシータが……」
それだけ言うと落ちてた籠を抱きしめてその場でうずくまってしまった。
「バズーさん、どうしてシータさんは捕まったのにそれをバズーさんが知ってるんですか?」
少し疑問に思ったことを口に出してみたが
「シータはドーラと言う友達と薬草を取りにきていたのです。シータはドーラを助けるために囮となって捕まったとドーラが冒険者ギルドへ依頼を出したのです。ですがウリボウは強力な魔物で誰も受ける者が居なかった所でレオナさんが来られたのです!」
「なるほど、それにしても金貨1400枚はかなりの大金だと思うんですけど大丈夫なの?」
「はい、父のバルスが家の抵当権と鉱山の採掘権を手放してお金を作る事ができました。それでも討伐の相場は金貨3000枚でした。誰にも受けてもらえないと思っていたので、レオナさんには感謝してもしきれません」
とても重いな……聞かなければよかったかもしれない。そこで強化していた聴覚に何かが迫ってきてる音が聞こえる。人間じゃないな……。
「バズー!何かが来る。戦闘準備をしてください」
俺の言葉にバズーが腰からブロードソードを抜いて示した方向へ視線を向ける。
俺も森の間から出てくるウリボウを待っていると大人のイノシシを20倍くらいにした巨大なイノシシがそこにはいた。
「あ、あれがウリボウです!あそこにいるのはシータ!この兄が必ず助けてやるぞ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます