第286話

「レオナ、少しでも投資したお金は回収しないといけません。提供されてる料理を食べにいきましょう!」


「お供いたします」

 まったく仕方がない。

 本当に仕方ない。

 今回の報酬は、異世界の貿易都市がキャンドルにて彩られてる情景と人々の熱気で手を打とうじゃないか。


「レオナ、早く行きませんと料理がなくなってしまうのです!」

 俺は外行きの服に着替えてホテルをレオナを共だって出た。


 その日の祭りは、夜遅くまで続いた。




 商業の交差点であり砂上から緑多き湖上の都へと変貌を遂げた衛星都市ルゼンドから東へ馬車で移動を始めてからすでに2週間が経過していた。その間、緑地化した大小の町や村を経由したが草薙一行は、聖女が今回の緑地化の奇跡を起こしたという噂により手厚い歓迎を受けた。


「お金がほ・し・い」

 地の底で這いずるグールのようにクサナギは馬車の中でつぶやいていた。それを向かい側の席で見ていたレオナは、またかとため息をついていた。


「クサナギ様は、数日前から同じ事を繰り返して言ってますが、もうお金を使い果たしたのですか?」

 アルゴ公国を救った際に、王宮から感謝の意として送られた金貨は5000枚。日本円で言うとその金額は5000万円であった。レオナ、草薙、コルク、アリアの4人で割ったので一人1250枚であったがそれでも1250万円は一人は持っていたことになる。それをたった5週間で使い切ったと草薙は言っているのだ。

 レオナが困惑するのも当然と言えば当然であった。


 そんな困惑した顔で質問をしてきたレオナに、草薙は「はい」と頭を垂れた。


「一体何に使ったのですか?購入したリストは?」

 レオナの言葉に頭を振る草薙。それを見てますます呆れ顔になるレオナ。


「どうせアイテムボックスに閉まってると思いますが、少し見せてもらえますか?」

 草薙がアイテムボックスから取り出すのはオリーブオイルから作られたハーブが混ぜられた石鹸であった。


「……?石鹸ですか?」

 素直にうなずくと草薙は次々と石鹸を取り出し始めた。ラベンダーの香りの物やバラの香りの物や多種多様であった。その数は300個近い。さらには色とりどりの服や下着や靴に帽子に香油と代わる代わるアイテムボックスからアイテムを取り出しては入れていく。


「……どれだけ買ってるんですかと言うよりも、どれだけ広いアイテムボックス持ってるんですか?明らかに容量がおかしいですよ?」

 規格外のアイテムボックスを持つ事と草薙の浪費癖を見せられてレオナは頭が痛くなった。


 草薙一行の構成は、アルゴ公国が手配した騎士団20人と安全な旅のお供としてルゼンド総督府が国内の道中警備のためにつけた兵士10人と草薙とレオナを含めて32人と言う大所帯であった。

 

 2時間後、見渡す限り広大な草原で、草薙一行は野宿をすることになった。


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