第285話
「皆の者!ここに居られる聖女クサナギ様から、たった今!この金貨24000枚を、このルゼンドに寄付して頂けると話があった。そこで不肖このリュゼルグは、この日を聖女クサナギの日と決めたいと思う」
「――あ……あの……はなしを……」
俺は震える手でリュゼルグの口上を止めようとするが
「さすが聖女様だ!」
「おおお!総督府主催で今日は1日祭りらしいぜ!」
「聖女クサナギ様のおごりでだー!」
「砂漠を消したのも聖女様の力らしい」
「え?まじか!?」
「俺はわかってたぜ!完治が無理だって言われてた病も治すんだしな」
「おおおおおお」
「くそ、これが本当の悪党の力か」
「兄貴!さすがは裏の組織が手を出すなって言ってた大物は違いますね!」
「くそ、悔しいが完敗だぜ!」
「クーサナギー!」
最後のクサナギと言い出した奴の大声に釣られて市場はクサナギコールが鳴り響く。とてもお金を請求できる雰囲気じゃない……。
そこに俺の肩に手をおいたレオナが俺を見て頭を振った。
「これは、もう諦めるしかないですね」
レオナの言葉は、報奨金のためにがんばってた俺の心を打ち砕いた。
そしてその後、俺はぶちきれて町を覆う極大回復魔法を越えるぽい魔法で気管支系の病気だけじゃなくあらゆる病や怪我を治してホテルの一室に戻って引き篭もった。
「クサナギ殿、何か食べないとだめですよ?」
「……」
今、俺は傷心中なのです。放っておいてください。ベットの上で体育座りをしてると寝室のドアノブ部分がパキッと音を鳴らした。そしてレオナが入ってきた。
「クサナギ殿、少し表でも見ませんか?」
「いい……」
レオナがため息をついたのが分かったけど、今日は静かに放置しておいてほしい。そんな俺をレオナは抱きかかえるとテラスへと連れていき
「下を町を見てみてください」
仕方ないな。俺はホテルのテラスから下を見る。
そこには、俺が始めてここに来た時に感じた時のような鬱屈した感じも閉塞感もなかった。
町の至るところにキャンドルが置かれていて町全体を明るく照らしている。
総督府が手配したと思われる多くの露店が並んでいて誰もが料理を手に取って食べて踊りを歌を披露していた。
「クサナギ殿、たしか以前にクサナギ殿は言いませんでしたか?お金は使う事で経済をまわすそこに意味があると。たしかに金貨24000枚は大金です。
ですがこれだけ多くの人々を幸せに出来るのでしたらその使い道は間違ってるとは某には思えません。
それは誇って良い事ではないでしょうか?
クサナギ殿は、この情景を見てどう思われますか?」
決まってるじゃないか。俺が提供したお金で料理が配られてるのだ。だったらすることは一つだろう?
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