第284話

「ヒール!」


俺は杖を持ちながら初級回復魔術を唱えるが、術式形態は神代の杖を利用した魔術を超える魔法を越えるよく分からない物なので困っていた。でも病に侵された人が直るからそのへんはスルーしておくことにする。


「子供を救っていただき、ありがとうございます」

 あまり栄養状態の良くない母親がお礼を言ってくるので俺はアイテムボックスから昨日、購入しておいた果物をいくつか出して渡す。


「これでも食べてください。あとは栄養をとっておけば良くなりますから」


「お姉ちゃん、ありがとう!」

 俺は子供の頭を撫でながら身体強化魔術の応用で衰えていた体組織を無言で修復する。


「それでは次の方を――」

 しばらく治療をしていると、治療を待っている人達の後方がやけにざわついていた。しばらくすると列を作ってる人々の間から総督府の長官リュゼルグ・バーマメントが3人の兵士を連れて現れた。


「ここにいらっしゃたのですか。てっきり総督府の方へ直接、報奨金を取りに来られると待っていたのですが来られないようでしたのでお持ち致しました。もちろん砂漠を緑ある草原や森や川に戻して頂いたのですからかなり色をつけてありますし医療のうぶっ」

 俺は、身体強化魔術を最大にまで高めてリュゼルグの口を手で塞いだ。こいつ、こんな所で何言ってるんの?それ知られたら俺が涙を流して慈善活動させられてたのが全部無駄になるだろ!もう少し空気読めよ!


「嫌ですわ、何を仰られてるのか分かりませんわ」

 俺は、ここでその話はするな!あとで総督府に取りにいくぞと目配せで総督府長官リュゼルグに合図を送る。それを見たリュゼルグもしばらく考えていたようだが頷き返してくれた。


「そうでしたか……このリュゼルグ。己の未熟さをこれほど痛感した事はありませんでした」

 ――あれ?何か話の流れが……。


「さすがは教会を建て直そうとしてる教皇アリア様がお認めになられた本物の聖女様だけはありますね。私は聖女クサナギ様、貴女をお金に目が眩むような人間だと思い込んでいたようです。たしかに無料でこのような診療所を作り治療を施しているのですから……」

 それは誤解だ!以前使った無料で治療します看板を間違えてアイテムボックスから出して、それをレオナが設置したから無料になってるだけなんだ!俺はお金がほしいし!!


「私を試していたのですね?救うに値する人間かどうかを!民を守るために対価をきちんと払うという紳士的な態度が取れるかどうかをあの夜、見定めていたのですね」

 ――見定めてないし!お前、約束したよな?お金払うって!!


「分かりました。このリュゼルグ、聖女クサナギ様にお渡しする予定でありましたこの金貨24000枚を民のために使わせていただきます!聖女クサナギ様のご好意を忘れることは致しません」

――あ……あの……。


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