第283話

「本当ですか!?」

 ガタッと立ち上がる店子さん。そして……俺の手を握りながら


「家はすぐそこなんです、案内いたしますね!あ、すいません。私はカリアって言います。お母さんの名前はリアラスです。」

 俺は彼女に連れられる形でおばさんが倒れて寝てると言う家に足を踏み入れた。汚いところですがと娘さんが言っているが、別段汚いと言う感じはしない。部屋は玄関とかまどのある部屋と寝室2部屋らしく寝室の一室におばさんは寝ていた。


 さて、まずはどのような病気がチェックしないといけないな。鑑定を使って調べていくと特に犯罪系スキルは無い。あとは治療方法にあたりそこそこ当たりをつけたいのだが……そこでふと思い出す。

 たしか地球のアラル湖が砂漠化した時に発生した病があった。

 それと同じ事がここでも発生していたのなら?

 この町に入る時に町は湖に囲まれていた。つまり元々は温暖な環境から短い時間で砂漠に晒されたとしたらアラル湖と同じ事が起きているのではないだろうか?

 ということは、塩害による気管支炎系の病気が考えられる。そんな物をこの時代の魔術で直せるのか?普通に無理だ。

 大雑把な医学の知識はあるが詳細な医学知識はない。

 そんな状態で回復術を使う訳にはいかない。原子を組み替えて無害な物にすることが出来れば改善させることも可能なのだが……。


――ユウティーシアさん、この杖はね粒子に干渉して細胞を修復したんだよ?


 無意識の内に俺はアイテムボックスから杖を取り出す。そして杖をリアラスに向けてヒールを呟くと杖が光り俺が普段使ってる魔術式が空中に表示されるとその形状を変えていく。

 そして白い光がリアラスの体を包み込むと苦しそうな顔をしていたリアラスの表情はおだやかな表情で寝ていた。


「……」

 不思議な感覚だった。

まるで使い方が本能で分かる様な感じだ、これが神代時代の物の力なのだろう。


「どうですか?」

 恐る恐るカリアが俺に尋ねてくるが


「もう大丈夫です。しばらくすれば目を覚ますでしょう」

 その後、少ないですがお金をと言われたが俺は辞退した。お金がほしくてした訳ではないのだ。どうせ総督府からいっぱいお金もらえるしな。でもなかなか引き下がってくれなかった事もありお店の果物を少しだけ分けてくれればいいからと言ったら……。



――3時間後


「はいはい!聖女クサナギ無料治療院はこちらですよー」

 レオナが呼び込みをしてカリアが接客対応をしていた。

 どうしてこうなった……。

 俺は頭を抱えた。

 果物をもらうだけのはずが「お母さんの病を治してくれてありがとうございます」と何度も頭を下げられた事で近くの店舗の方で同じ病を発祥してる人から治して欲しい言われてしまい、断りきれずに直してしまった。

 そしたら、普通の治療魔法師では完治しない病を完治させた魔法師という事で、噂が噂を呼び人が集まってきてしまったのだ。

 しかも教会の治療魔法師達も自分達が治せない病を治した魔法師に興味あるらしく見にきて俺を見るなり聖女様!と叫んだのだ。

 どうやら神兵討伐の際にかなりの治療魔法師がここの町から引き抜かれていたらしいのだが、偉い迷惑な話だ。

 しかも率先して教会の連中も総督府の連中も、並んでいる人たちの整理手伝ってるし……。


 これ総督府に治療費の名目として金銭請求出来ないかな?

 



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