第282話

「アイテムボックス!」

 魔術を使うと杖はそのままアイテムボックスの中に収納された。神代時代の物であっても収納できるらしい。寝室から出ると丁度戻ってきたレオナと顔を合わせた。


「クサナギ殿、町の周辺の砂漠だけではなく他国の国境付近まで緑が広がってると商人が噂してました」


「なるほど……」

 どんだけ俺の魔力使ってたんだ?これはエリア指定して使わないと神代アイテムは使い物にならないな……。


「それでお金は?」

 俺の言葉にレオナは首を傾げて


「クサナギ殿が起きてから貰いに行こうと思っていました」

 たしかに俺が行った方が良いかも知れないな。この町の周辺の砂漠化を緑化させたのも俺の魔力消費の賜物だし追加で請求することも可能だろう。


「そうですか。分かりました、それでは私の体調も戻ったことですし市場に行って、追加請求をするためにどのくらい町の状態が改善したかチェックするとしましょう。砂漠化を止めて緑溢れる土地にしたのは私の成果ですしね!」


「クサナギ殿は、相変わらず考えが下種いですね」

 下種い?これは正当な賃金と言ってほしいものだ。

 だいたい、ここ最近の俺とか働きすぎだろ。

 マジで前世のブラック会社社員も顔を真っ青にして裸足で逃げ出すくらい連日徹夜してヒールしてお金配ってたんだよ?これがホワイト企業だと言うならどこの世界にもブラック企業なんて存在しないと思う。


1時間後、市場を見て回っていて感じた事は、悲壮感こそ無くなったようであったが咳をしてる人が多く見受けられた事だ。初日は砂漠だからそんなもんだと思っていたがこの気候の状態でそれはありえない。


「すいません、少しいいですか?」 

 俺は、前に果物を購入したお店の店員がおばさんじゃなくて若い女性に変わってるのに気がついて声をかけた。


「はい、なんでしょうか?」

 女性は俺を見るなり言葉を返してきた。


「えっと、昨日ここで果物を購入したはずなんですけど今日はその商店の方はいらっしゃらないんですか?」

 俺の言葉に女性は表情を曇らせたことを俺は気がついた。どうやら余計な詮索をしてしまったようだ。


「いないというかお母さんは倒れてしまって寝込んでいるのです。治療魔法師の方に、診てもらおうにも高くてお支払いができないのです」


「ちなみにおいくらなんですか?」


「金貨100枚です……」

 高いな……金貨100枚って日本円に直すと100万円じゃないか。まだまだ教会は改善の余地がありそうだが俺も慈善事業で他人の治療するなんて真っ平ごめんだからな。だけど一度話した相手だし、一人くらいなら治療してやってもいいか……。


「あの、一応……私も治療魔術が使えるので見てみましょうか?」


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