第257話

「そのような魔術は感知できないです。そもそもクサナギ殿のような魔力量を持つ人間に精神系魔術をかけるのは不可能に近いです。魔力の桁が跳ね上がる相手には魔術はほぼ有効打になりえません」

 なるほど、つまりレオナの魔力量が6ケタいってるという事は、最上級魔法師でもレオナには魔術戦闘では手も足も出ないという事になる。そうなると神級魔法師とかほぼ敵なしってことか?そりゃ俺の事をどうしても魔法帝国ジールは欲しがるよな。それでも教会が俺を浚った後に手を出さなくなると聖女アリアが言ってた事を考えると教会ってかなりの権力があるんだな、さすが中世……。


「そうですか、そうすると困った事になりますね」

 俺は一人呟きながら溜息をついた。浮浪者が多いのに雨なんて降らせたら彼らの体温を下げることに繋がってしまう。俺はテラスに出ると上空に発動させていた霧雨の雨を解除する。


「天候魔法を解除されたんですね。突然、使われましたから驚きましたがこの短時間でしたら問題ないでしょう」

 レオナが俺に語りかけながら、リビングのテーブル上に置かれていた洋梨のような果物を手に取ると一口齧って


「クサナギ殿も食べられますか?」

 と聞いてきたが俺は頭を振った。どうも何かを食べると言う気分にはならないのだ。


―――コンコン。


 扉をノックする音が部屋の中に響き渡った。この時間に来客が来る予定は入っていないしルームサービス等もあるかどうかは知らないが頼んでいない。俺とレオナは互いに無言で目配せして頷き合いレオナは扉側に移動した。


「はい」


「お手紙が届いています」

 レオナが扉を開けて男性から手紙を受け取ると、ここのホテルの従業員だと思わる男性は部屋の扉を閉めた。聴力を強化して足音を聞いていた所、部屋から規則正しい足音が離れていくのが確認できた。


「クサナギ様、特に問題はないようですね」

 レオナの言葉に俺も頷き返す。やはりレオナも身体強化魔術で聞いてたらしいがレオナは身体強化関係の魔術に関しては通常の魔術のみで俺みたく細胞レベルでは変質は出来ないらしい。その理由は、遠回しに聞いた限りだと地球で生活してた時に得た俺の知識や記憶をレオナが視れない事が要因だと思うが何故見れないかは詳しく調べてないから分からずじまいだ。


 兎に角、今はホテルの男性が持ってきた手紙を確認するのが先だな。


「レオナ、手紙を貸してもらえますか?」

 俺はレオナから手紙を預かり蝋で密封された部分を切り中身を取り出す。手紙にはアルゴ公国聖女クサナギ様、商業都市ルゼンド総督府へお越しくださいとパーティの招待状も一緒に添えられていた。


 3時間後、俺はパーティ用のドレスを身に纏うとアルゴ公国から手配された馬車へ乗り込む。対面には簡素な騎士風の恰好をしたレオナが乗り込む。


「それではよろしく頼む」

 レオナの指示で馬車は動きだす。馬車の周りにはアルゴ公国の騎士団10人が固めており警備上ではいつもの半分という所であったが


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