第258話

「クサナギ殿、念のために道中には騎士団10人を所々配置しております」

 俺の考えは杞憂であったようだ。


 夜の帳が落ちる時間帯、町の中を馬車で移動するという事もあり多少時間はかかると予想はしていたが予想を裏切って5分程で到着した。総督府前についた俺はレオナにエスコートされる形で馬車から降りて商業都市ルゼンド総督府を見る。


 青を基調として作られていた海洋国家ルグニカの総督府とは違い、切り出された石と煉瓦だけで作られたルゼンドの総督府は機能だけを重視して作られた砦のようであった。


「これはこれはお待ちしておりました」

 馬車から降りてルゼンド総督府を見ていると建物から出てきた男性に声をかけられた。


「このたびはパーティの招待と言う事で伺いましたが?」

 俺は馬車から降りた周囲を見渡すがとてもパーティをしてるような雰囲気には見えない。


「そちらに関しましてはすぐにご説明させて頂きます」

 男性はそう語ると俺とレオナを総督府内に導きいれる。内部に入ると各所に彫刻が施してある柱が見受けられるがそれでも石だけで作られた内部は無骨と言っていい程だ。しばらく歩くと奥まった場所に緑の庭園が存在しており、そこには数脚の椅子とテーブルが一つ置かれていた。


「お待ちしておりました。神兵と討滅し得た希代の魔法師クサナギ様、私の名前はリュゼルグ・バーマメントと言います。ここルゼンドの総督府の長をしております」


「初めまして、私の名前はクサナギと言います。今回はパーティへの招待と言う事でお伺い致しましたが?」

 要約すると、アルゴ公国の使者に対してパーティを開くと言って話が違うぞ!どうなってんだと言う遠回しの意図を含んだ内容であったが。


「そうお伝え致しませんと来ては頂けないかと思いまして、申し訳ありません」

 たしかにパーティじゃなかったら面倒だからと断ってた可能性も否定はしない。


「それで私に、どのようなご用件でしょうか?」

 こちらも今日は、長期間の馬車移動の後なので、ひさしぶりのお布団でぐっすりと寝たい。


「はい、実はお話と言いますのが……古代都市遺跡後の調査を依頼したいのです」


「調査ですか?」


「はい、アルゴ公国の王都を守り抜いた希代の魔法師クサナギ様でしたら遺跡の謎も解けるかと思いまして……」

 謎と言われても俺がそれを受けるメリットが何もないんだが。


「申し訳ありませんが私どもはそのような事に時間を費やしてる余裕はないのです」

 戦争を止めないと行けないからこれは嘘ではない。


「実は、この町を襲う砂嵐が古代都市遺跡後から発生してると冒険者が報告を上げてきておりまして……」

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