第256話

俺は周囲を見回して誰も壁の上に居ないことを確認する。そして魔術式を頭の中で組み立てる。その中から俺が選ぶのは逆位相の風の回転。魔力を研ぎ澄まし風を作り出し迫りくる嵐に当てる。二つの竜巻が打ち消しあい砂嵐は消滅していく。


「消費した魔力は1千万程度か、後は……」

生活魔法である水を町の上空に生み出す。町の上空のみに作り出すのは砂漠に降らせると塩害が発生する可能性があるから、そして一箇所に集中するものではなく町全体に雨のように降り続ける持続系に降り続けるように設定し発動させる。霧雨のような雨が町全体を覆うように降り始める。


「クサナギ殿。たまには良いことをするのですね」

たまには言いすぎだ。俺はいつもいいことをしてるしそのつもりなわけだが今回は数日泊まるからなるべく町内の気温を下げておきたい。


「それでは、後は教会に赴いて炊き出しの許可を頂きましょう」

俺の言葉にレオナは頷いてくれたが、その表情は何かを考えているようだった。




 ヘルバルド国内に存在する商業を生業とする衛星都市ルゼンド内を俺とレオナは北の塀から降りた後、教会へ向けて歩いていた。霧雨のように降る雨は少しづつ乾いた町を潤していくが決して不快と言うわけではなく町の気温を何度か下げていた。


「それにしてもクサナギ殿は、この町にきてからと言う物いつもと感じが違いますね?」

 俺はレオナの言葉を聞きながらそうか?と思ったが、確かにいつもはどんな町に行こうが放置でいいやとか俺には関係ないしとか思い手を出さない事に気が付いた。


「そうですね」

 理由は分からないが何となくしてるだけに過ぎないのだ。この霧雨の魔法だって環境開発実験センターの知識を応用した魔法だけど、本来なら自分の部屋にだけ生活魔法のクーラーぽい魔法を作って発動させてればいい訳でここまで大がかりの魔法を使う意味がない。そう考えるとこの町に入ってからの俺の行動はおかしいとさえ言える。


「レオナ、申し訳ありませんが教会には寄らずに一度、宿に戻りましょう」


「分かりました」

 俺とレオナはそのまま宿に戻り借りてた部屋に入る。そしてすぐに購入してきた果物を全部アイテムボックスに入れた。


「レオナは精神系魔術とかに造詣はありますか?」


「一応、護衛の騎士ですからそこそこの知識はあります」


「精神系の魔術は魔力量に差があっても効果があったりしますか?」

 俺の言葉にようやくレオナが気が付いたようで周囲を見渡していたが


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