第228話
俺はアイテムボックスから簡素な木の椅子を今度は二脚、取り出すとその場に置く。そのうちの一つに座りもう一つは患者用だ。
「分かりました」
レオナの声色がかなり不機嫌なのだがどうしたものやら……。内心ため息をついた。
――――――
―――
しばらく診療をしていると、次に入ってきたのは立派な体格の従者に支えられた裕福そうな男性であった。その後ろからは女性も入ってくる。
「彼方がどんな病をも治すことが出来ると言われてる聖女クサナギか?」
すぐに鑑定を行う。男性のスキル欄には犯罪スキルが存在していた。殺人と呼ばれるスキル。それらは正当防衛ではつかない。一方的な殺戮を行った場合にのみつくスキルと俺の鑑定には出ている。
「私の治療は受ける方がどれだけの善行を積んできたのか、そして普段からどれだけ品性公平だったのかを反映するモノです。私の力ではなくあくまでもリメイラール神様の威光であり力なのです。ですから殺人スキルを持ってる方ですと半減したりします、ですので何でもは治せません」
俺は遠まわしにお前には殺人スキルがあるぞ?と説明をする。男性の顔は先ほどまで真っ赤だったが今は真っ青になっている。一緒についてきた女性は何が何やらと言う感じだ。
「それでしたら問題ありません。我がダストゥール侯爵家は、このアルゴ公国の宰相職を代々行ってきた由緒正しき家系なのです。私の息子も人に恥じない生き方をしてきています。そうよね?」
なるほど、彼女はこの顔を真っ青にしてる男性、鑑定で見た限りだとネクロ・フォン・ダストゥールの母親なのか。ふむ、鑑定で見る限り母親で間違いないようだ。
「イシス様、私は時折何でも治せるか?と聞かれた時に誰であっても善行を積んでる方であり品性公平な方でしたらリメイラール神様は、祝福を与えてくださっていますと説明してるに過ぎませんので心配なさらずとも大丈夫ですわ」
「え?私、名前をお伝えしましたか?」
俺は女性の言葉に首を左右にふる。そして
「いいえ、私は体調が悪い方のみ限定で、患者の容態を診る事ができる力をリメイラール様より授かっているのです。そうで無いときちんとした治療はできませんから」
「そうなのですか?」
「はい、ヒール!」
俺は彼女の目を見て、宇宙開発実験センターからの知識から肝臓が悪いことを理解していた。そのためヒールで体内の細胞を修復させていき完治させる。彼女にはどこにも問題のあるスキルは存在していなかったのだから問題はない。
「如何ですか?きっと体が軽くなったと思います」
末期癌状態だったのだ。それが改善されたとしたらすぐに分かるはずだ。
「体が軽いですわ。ずっとあった痛みも感じません」
「それは良かったですわ、ほかに異常は見られませんね」
「これが聖女クサナギ様のお力、それではぜひ息子のネクロの治療もお願い致します!」
俺は彼女の言葉に首を左右にふる。
「どうしてですか?」
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