第162話
そうだ。これでいい……余計な事はしないに限る。幸い、誰も俺の意見に反対する奴はいないようだし。俺が集落から離れようとすると俺が抱き上げた子犬が足元にまとわりついてくる。そんな風に纏わりついても今は緊急事態だし対応なんて出来ない。
「クサナギ様、彼らの両親が戻ってくるまでここで面倒を見てあげる事は?」
何を言ってるんだ?俺達がいるから……俺がいるからここは狙われてるんだぞ?俺がいなくなればガーディアンとして転送されたコボルト達も無事に戻る可能性があるかもしれない。だったらここは私情に流されずに効率重視で動いたほうがいいに決まってるだろ?
「私達はあくまで部外者なのです。部外者が手を貸すのはあまり宜しいとは思えません」
「アンタさ!自分さえ良ければ良いって思ってるのかよ!」
俺の発言にパステルがまた切れたようだが
「いまは感情的になってる場合ではないでしょう?長老様よりすぐにここから脱出するように言われています。その事実を優先させるべきではないのですか?」
「ならアンタ一人でいけよ!たしかに無闇に戦うのは良くないってアンタは言ってたよ。でもな?何の力もない怯えてる者を放っておくほど人間腐ってねーんだよ!」
「……何が……言いたいんですか?」
パステルは、何も分かってない。効率的に物事を進めていく上で俺は最善の手を取ってるに過ぎない。なのにパステルは俺に暴言まで吐いてきた。こんな未開の文明人のくせに!!
「また殴るのかよ?いう事聞かなければ殴るのかよ?」
その言葉で俺は自分がパステルを殴ろうとしていたことに気がついた。
「相手が自分の意見を聞かなければ暴力に訴えるなんてさ、アンタが信用できないって言ってた人間や奴隷商人と何が違うんだよ!なあ答えろよ!?」
「――っ!これは……」
「クサナギ様は確かに強いですし私達よりも頭もいいのでしょう。ですが思いやりや人を信じないその考えには賛同は出来ません」
アリーシャが伏せ目がちに俺へ意見を述べてくる。
「クサナギ殿、ここはアリーシャとパステルに任せて某たちはここを脱出しましょう。クサナギ殿の無事を確保する事も任務ですゆえ」
「わかった……」
レオナと俺は集落を抜け岸壁にたどり着く。そうすると岸壁がスライドし内部に入れるようになる。
「乗ってください」
俺の言葉にレオナはエレベーター内部に入り俺も後に続く。エレベーターの扉が閉まると一瞬重力を感じたと思うと上昇を開始した。
「クサナギ殿、2人をあまり悪く思わないでください、2人とも思う所があったのでしょう」
それでも彼女らのした事は職務放棄ではないのだろうか?俺には納得できない。
「ですが、私を護衛すると言った立場上、あの態度はよくないと思います」
「そのとおりですね」
俺の言葉に、レオナが苦笑している。とりあえずまずは落ち着こう。あまり感情的になっても仕方ない。俺がこの迷宮つまり施設から離れれば襲撃者は離れるつまり被害は抑えられる?
――いや……よく考えろ……。
襲撃者がその施設に目標人物がいなかった場合、普通はくまなく探す。
つまり俺が見つからない場合はここが無事である可能性は限りなく低い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます