第163話
解析で魔力量を見るとすでに200億まで回復している。
なら……戦うしか方法が?いや……俺の力では勝てないって言われたじゃないか?
自分より強い力を持つ者と戦うなんて馬鹿のする事だ、逃げて大人しく待ってるのが最善の策だ。他人がどうなろうと……。
”アンタが信用できないって言ってた人間や奴隷商人と何が違うんだよ!”
――くそっ。
何だよ、自分が一番大事で何が悪いんだよ。他人にやさしくしたって、信頼したって結局は裏切られるんだ。俺の長い人生経験がそう教えたじゃないか?誰かを踏み台にして犠牲にして踏みつけて生きていくのが人間の本質だって痛いほど痛感したじゃないか!
出来ない事は出来ないんだよ!無理なら不可能なら足掻かずに諦めたほうがずっと楽なんだよ!
そうだよ、俺は悪くない、悪くないんだ。
「クサナギ殿」
「なんですか?」
「私には、クサナギ殿が何をそんなに苦悩してるのか分かりませんが年下に出来るアドバイスとしては考えるより行動した方が時にはいい時もありますとだけ伝えておきたいです」
俺の目を見ながらレオナはそう語りかけてきたが、言いたい事は分かる。
だが、もうそんな若い時代はとっくに過ぎ去っている。
物事を考察し論理的に考え効率よく動くことを主軸とした俺にはそんな事はもう無理だ。
それに今更、他人のために動こうなどとも思わない。
「草薙殿ついたようです」
いつの間にかエレベーターが止まっていた。扉が開き迷宮1階の壁が視界に入る。そうだ、とりあえずまずは迷宮から出ることが重要だ。俺は記憶を頼りに迷宮内を疾走していく。途中でコボルトとかまったく違う粘液性の魔物がいたが無視し横を通り抜けた。
「あれです」
俺は、身体強化魔術を使いながら階段を上っていく。後ろからはレオナも息を切らせながら追ってきている。1分程で階段を駆け上がると周囲には何十匹ものコボルト達が横たわっており草原を赤く染め上げていた。
「――っ!?」
俺は声のした方向へ視線を向ける。声を発したのはレオナのようで腰からブロードソードを抜いて構えていた。そしてレオナの先には俺達を案内したコボルト3匹とそれを援護するように陣形を組んでるコボルトの姿が見える。
「クサナギ殿、どうしますか?」
どうするかだって?コボルトが相手にしてるのは10メートル近い巨人だぞ?しかも手には光で生成された槍をもっている。それに解析を使った結果……。
name:ドミニオン(第10階級最低品格生物兵器)
HP:52000000000/60000000000
MP:15000000000/15000000000
STR:70000000000
DEX:70000000000
CON:70000000000
WIS:70000000000
全ての数値が俺より高い。勝てるわけがない……。
「レオナ、すぐに逃げましょう。あれとは戦ったらいけません」
そうだ、身体強化を最大まであげたとしてあれには勝てない。絶対に無理だ……。
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