第156話

「あの、皆さん2本足では歩かれないのですか?」


俺は疑問に思って前を歩く3人に声をかける。


「はいですワン。成人になって儀式を受けないと言葉も話せないし立って歩くこともできないワン」


「そうなんですか?」


思わず疑問系になってしまう。俺としてはコボルトは全員が話せて2本足で歩くとばかり思っていたからだ。そんな中、何匹かのコボルトの子犬が俺に興味津々に近づいてきた。ほかの女性と思われるコボルト達は成り行きを見ていたが近づいたら駄目だとは言って来ない。ふむ……。俺は近づいてきたコボルト子犬を抱き上げた。大きさとしてはポメラニアンの成人犬くらいの大きさだろう。この腕の中にスポッとフィットする感覚がいい。しかも毛並みともふもふ感と言いこれは良いものだ。


「外の人間は我々のことを目の仇にしていますがお嬢さんは違うのですワン?」


「えーと……」


なんと答えればいいのだろう。この世界の魔物の常識が良く分からないんだよな。仕留めたのは衛星都市スメラギから衛星都市エルノの間に一人旅してたときに襲い掛かってきた大きいイノシシくらいだし……。


「どちらかと言えば、犬派ですから……」


すごい曖昧な答えになってしまったが答えようがないから困ったものだ。


「そろそろお仲間の方々の目隠しを取ってもいいと思うワン」


黒い毛並みのガイと言うコボルトが助言してくれたが、俺としては彼女らがコボルトの村を見て何もしないとはどうしても信用できないから目隠しのままでもいいと思っていた。でも確かにここのコボルト村の全員のステータスは鑑定した結果だが俺の護衛をしてる3人の騎士の誰よりも上で問題を起こしてもコボルト達が普通に武力解決できる。


「――――――そうですね。アリーシャ、パステル、レオナ、目隠しを外してもいいです」


俺の言葉に3人とも目隠しを外し周囲を見渡した後、驚いた表情を見せていたが俺は3人のコボルトに視線を向けていた。


「それでは長老様の下へ連れていってもらえますか?」


「それがすぐには出来ないと思ってたけど問題ないみたいワン」


「ん?」


「だってお姉ちゃんは子供にもやさしく対応してくれてるワン」


子供って子犬だろうに……。腕の中に抱えていた子犬は目を閉じて寝ているし癒される。もうここに住んでもいいんじゃないかな?


「ついてくるワン」


今まで殆ど話さなかったLV200超えの白い犬が歩き出した。俺もあとをついていくと明らかに今までの建築様式とは違う建物が目の前に見えてくる。コンクリートで作られた研究施設とも取れる流線型のドーム上の建物、その中に俺たちは案内されたまま脚を踏みいれた。建物内を歩いていくとあまり生活観が見受けられない部屋ばかりあり部屋の中には何も無い。在るとしても朽ちた金属製のパイプが転がってるだけだ。ドームに入って5分程歩いた所で、受付らしきものが見えてきた。

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