第130話

スメラギ総督府は、衛星都市エルノに資金を融通する代わりに奴隷を提供してほしいと言ってきたのだ。もちろんカベルは断った。

その時はそれで話は終わったが夜食に盛られた毒により彼は幽閉され実権を息子のカーネルに奪われてしまう。息子のカーネルは、カーベルに愚民は優れた者が管理し導かねばならないと最後に伝えて去っていった。


幽閉期間は1年近くあっただろうか?

総督府の地下の部屋から出られず過ごす日に、カーベルは嫌気が差していた所で一人の男が部屋を扉を開けて入ってきたのだ。


入ってきた男は元A級冒険者のスカイ、たしか帝政国のホテルで執事をしていたと聞いていた。

彼が言うには、金貨30枚で雇われたという事だった。

金貨30枚?自分を助けるために?そんな端金で助けるなんて酔狂な男だとカーベルは思った。

だが、スカイと言う冒険者はカーベルへ伝えてきた。


今、一人の少女が衛星都市スメラギと衛星都市エルノの騎士を合わせたほぼ全兵力とたった一人で戦っていると。カーベルはまだ自分にそれだけの価値があるのかと自らを奮い立たせる。

たった一人でも自分の政策を指示してくれる者がいるのならそれに答えないで何が王家だと……。


そしてカーベルは、騎士達が出払った城内を走り抜け市場に出ると子供たちが何やら走り回ってるのを眼にした。子供たちは誰もが大人たちにお姉ちゃんを助けて!と声をかけていたのだ。


これは一体どういう事なのだろうか?

そんな私の疑問に答えたのは町で情報屋をしていたキッカだった。


キッカの話では、奴隷制度と真向から戦うカイジン・クサナギと言う少女がいてそれを好ましく思わない勢力であるスメラギ総督府と戦いを一人で繰り広げていたそうだ。


たった一人で……少女の身でありながら……私は、自分の矮小さに気づかされた。

王家、そして海爵の地位を持ちながらも政策が上手くいかず幽閉された時には心が折れかけた。


それなのに、少女はたった一人で騎士ひいては総督府と戦い怪我をした騎士達に治療を施してもいたそうだ。その事で大切な事に気づかされた騎士達は、総督府の騎士を辞めたと言うのだ。

さらにはなけなしのお金を使い、親を奴隷にされた子供たちに身銭を切って食事を作り与えたと言うのだ。


なんというなんという素晴らしい少女なのだろう。

まさしく聖女、いやもう神と言っても過言ではない。


そんな時だった。

迷宮のある方角の上空に巨大な水の塊が生成され地面に降下していくのだ。

町の誰もがそのスケールに圧倒され様子を見に走り出した。

もちろん私も例外ではなかった。

そして現場につけば、300人近い騎士達が倒れておりその中には息子のカーネルまでもが居た。

私はカーネルに近づくと私に気がついたのか震えながら自分が悪かった自分が悪かったから許してくれと言いながら気絶した。


これはまさか?と思い遠くを見ると黒髪の少女がこちらに向けて手を振ってさって行くではないか。

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