第124話

この世界の人間は漠然と強化できるらしいからここだけは現代日本の知識の弊害ともいえる。


そんな俺が導きだした答えとは、別に海に浮かばなくてもいいんじゃね?だった。

大会規約にそんなの書いてなかったし、そこで俺は自分の魔力量から計算してこのくらいならいけるかも?と思った船を奴隷商人のグランカスに作ってもらった。


それがこの底と縁と先端部分を鉄板で強化しマストを取り除いた船だった。

推進装置は、生活魔法である洗濯物を乾かすためのそよ風を起こす魔法を魔力量に物を言わせた物だ。

そう、名づけるなら”空飛(スカイ)漁船(フィッシング・ボート)”ってところだろう。


漢字だとダサイのに英語にするとカッコイイのは何故だろう?とも一瞬思ったが気にしないことにする。

強化された聴力が、「う、浮いてるぞ?」とか「あれが灰塵クサナギの力なのか?」とか「ヒールこわいヒールこわい」とか「きゃークサナギさまー」とか「あれが神の力か」とかいろいろ聞こえてくるがもうこの際気にしない。

っていうか灰塵ってなんだよ。俺そんなひどいことしてないぞ?

兎に角、このスカイ・フィッシング・ボートは底が空気を効率よく使えるようにするため底を平らにしてあるために海の上では上手く浮くことが出来ない。


魔法を連続使用したことはないがたぶん数時間が限度だろう

さあいくぞ!

俺は、生活魔法の風の力を船の後方へ集め弾けさせた。船はホバリング状態のまま船体を軋ませ一気に会場から洋上へと躍り出た。

俺が浮上したことを察した奴隷商人が乗る8隻のガレー船は、俺の進路上からすでに逸れていたが残りの軍艦7隻は進路上に位置していた。


あとは追い抜いた後、生活魔法の風で軍艦が浮いてる海の底に気泡を作り出し軍艦の浮力を失わせて沈めてこのまま俺が海上都市ルグニカまで行けば勝利だ。


ワハハハハハ!これこそが俺の勝利の方程式!!中世時代に現代科学の力を持ち込んだ俺を悪いとは思うなよ?勝負は常に非情な物なのだ。


「な……なんだ!?あれは!!!」


突然、後方に姿を現した草薙が操る空飛ぶ漁船に7隻の軍艦に乗った人間は誰もが信じられない感想を抱いていた。


「空を飛んでる!?」


中世では自然風か人力が主だった時代では、時速8km~10km程度の船足が精々であった。

それが草薙の魔力量に物を言わせた船足の速度は時速700kmを超えていた。

いくら海面から浮いていたとは言え、その影響は洋上に出れば出るほど大きくなり軍艦の側面ぎりぎりを通ったときに発生した衝撃波は高波をを誘発させ全ての軍艦を側面から飲み込んでいく。


「うああああああああああああ」

「え?どういう……きゃああああああああ」

「いやあああああ」

「ま、まだ出航したばか……」

「船が船がしずがぼぼおっぼぼ」


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