第122話

「最後に、市民権を持っている者に参加者は限られます。あとは船への直接的な魔法攻撃は禁止です、そして奴隷が参加していいのは奴隷になってから一週間以上の者に限られます。以上、本大会から採用されます」


ざわざわと会場がざわめく。

エメラスの方を見ると勝ち誇った顔をしていた。

くそ、やられた。あいつら権力を使って俺が参加した場合の予防線を張ってきやがった。


「あら?クサナギ様、顔色が優れなくてよ?」


オホホホホホと愉悦感に浸ってるエメラスや他の王子や王女達が俺を見てニヤニヤしている。

どうする?この状況をどうやって打破する?

頭の中で現状を打破する道を探るが手詰まりで浮かばない。

完全にしてやられた。中世時代の人間だからと思っていたがまさか大会規約を逆手にとってくるとは思わなかった。

こうなったら、ユウティーシア・フォン・シュトロハイムの市民権を主張するか?

でも自国の人間でも無い者が他国の王位に関わる政に参加したら内政干渉になりかねない。

どうすれば……。


「クサナギ殿は、この私……カベル海爵の身内である!」


唐突に会場に大声が鳴り響いた。

声が響いてきた方を見ると、大男がいた。

どこかで見た記憶が……。


「ま、まさか……どうして……幽閉されてるはずでは?」


エメラスが一人驚きの声を上げていたが俺も彼をどこで見たか思い出した。

たしか衛星都市エルノの郊外で騎士達を倒した際に、市民を連れて指揮してた人だ。

俺が考え込んでいるとカベル海爵が近くまで寄ってきて俺に一枚の鉄で作られた薄いプレートを差し出してきた。


「愚息を止めて頂き、かたじけない。これはせめてものお詫びだ、とっておいてほしい」


受け取ると、プレートにはカイジン・クサナギと書かれていた。

カイジンは苗字じゃないし、クサナギも名前じゃなくて苗字だからと突っ込みを入れたかったが今は助かる。


「ありがとうございます。これで大会に出られます」


俺はニコリとカベル海爵に微笑む。


「それではがんばってくれたまえ」


「はい」


そして司会の方へ目を向ける。

司会が突然のことで呆けていたが俺も超展開すぎてついていけてないが大会に参加できるというなら貰っておこう。


「こ、こんなの無効ですわ!」


エメラスが何か騒ぎ立ててる。


「何が無効なのですかな?これは衛星都市エルノの総督府で私が発行したものだ。自治独自を推奨してるルグニカにおいて無効は通りませんぞ?」


カベル海爵がエメラスに所謂お前が口を出す権利はねーんだから黙ってろよと言っている。

それを見てる領主を目指す参加者達も皆、どうしたらいいのか考えているようだったが一言だけ言っておこう。

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