第121話
衛星都市スメラギから海上都市ルグニカまでを航海する王位簒奪レースは、一ヶ月の期間を渡って続けられる。その間に、陸地についた船は失格となる。
海洋国家ルグニカが建国されてからはまだ一度も途中で失格にはなった者はおらず、もし失格になれば不名誉極まりない物と言われている。
今日、王位簒奪レースを迎えた衛星都市スメラギには多くの商人や各国貴族に重鎮などがその祭りを見にきていた。
そして出航となる港ではすでに奴隷商人達のガレー船8隻と、各衛星都市と王都の治める領主である海爵の軍艦8隻が待機していた。
「お集まりの皆様、長らくお待たせしました」
司会の男が進み出て港を一望できるように作られた客席へ視線を向ける。
その格好は青を基調としたもので淵には金糸が編みこまれており人目で手が掛かってるのが分かる。
「今回、第20回王位簒奪レースを開催します!」
司会が声を張り上げると歓声があたりを包み込んだ。
それを俺は見ながら内心ため息をついていた。
「さて、それでは参加者の入場です!!」
次々と会場に参加者が入っていくのを見て俺も足を進めた。いまの俺の格好は、グランカスが用意した衣装を身に纏っている。
青を基調としたマーメイドドレスで胸元が極端に開いている。
白の大理石を小さく削りだし玉状にした物に穴を開け絹糸を編んだ物を通して網状にしてある。
前世で言うなら結婚式で女性がかぶるヴェールのようなものだろう。
エレンシア母様がかなりの美人だけあって俺もそれを受け継いでる事から、予想はしていたが会場は静まり返っていた。
ほかの参加者女性陣は3人いたが誰も海賊ルックな服装をしていたのに俺だけはまったくの異質だった。
俺が参加者のところに並ぶとエメラスが親の敵を見るかのように睨んできたが俺にはとんと心当たりはなかったので困った。
奴隷商人達も並び始めるとさすがに各領主達もおかしいと思い始めたようだった。
「グランカス!どうしてアナタが並んでますの?」
「同じ顔ぶればかりですと大会が盛り上がらないでしょう?それに俺達、奴隷商人はガレー船ですから誰も領主様に勝とうなど思ってませんよ」
エメラスとグランカスの話を聞きながら、俺はこちらの作戦が敵に漏洩してないことに安堵した。
そんなことを考えていると司会の人間が紙を取り出して読み始めた。
それは大会参加資格であった。
・参加資金 金貨100万枚
・自前の船を持ってる事(軍艦でも漁船でも可)
俺は聞きながらとくに問題ないと安心していたが次の言葉で氷ついた。
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