第117話

ふむ、どうやら疲労で幻覚まで彼らは見てるようだ。

これはきちんとヒールしてあげないとだめだな?


「えーコホン、これから皆様に一人づつヒールをしますので動かないでくださいね?」


俺は疲れた人を癒す人なのだ。

お金をもらった以上、やることはきちんとやらなければならない。

さあ仕事を始めよう。


3時間後、俺は衛星都市エルノから旅立った。


そして歩きながら思い出す。


俺が衛星都市エルノから去る際に、たくさんの住人が町から俺が居るほうへ向かってくるのが見えた。

へんなことに巻き込まれると困るのですぐに旅立ったのだが身体強化された目で見てみると、体格がガッシリとした身なりのいい男が何かを指示しているのが見えた。

きっと救護しにきたんだろう。ご苦労なことだ。


まぁ細かい事は気にしないことにしよう。


「俺の旅は始まったばかりだ!」



そして、道中はとくに何もなく進むことができた。

衛星都市スメラギの騎士達がお金を寄進しにきてくれたり、3メートル近いイノシシからお肉を分けてもらったり盗賊の皆様から寄付金を頂いたりと極めて俺の旅は順調に穏やかに進んだ。


「って!穏やかじゃねーよ!どう見ても波乱万丈だろ!?」


俺は、衛星都市スメラギまであと一日の距離で野宿しながら道中の過去を振り返り自分で突っ込んでいた。色々あり過ぎて最近麻痺してるな……。


「さてと……あとは簒奪レースに関してか……」


よく考えたら俺、指名手配されてる状態なんだよな?そんな状態でレース参加できるのか?と思ったんだがこの辺はもう奴隷商人達に任せるしかないな。

一時的に奴隷の枷をつけて参加するのもありだしな……。


「あとは……これか……」


参加する人間をチェックしていく。


ユージーン・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第一王子)

アルト・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第二王子)

ベルヘイム・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第三王子)

カーネル・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第四王子)

マガルタ・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第五王女)

オルトロス・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第六王子)

エメラス・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第七王女)

マガリータ・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第八王女)


これを見ながら俺は思ったことがある。

普通の貴族の構成とはこの海洋国家ルグニカの組織形態はずいぶん違うということだ。

普通なら、王女が3人に王子が5人なのだから第五王子と第三王女までで分けられるはずなのだが、おそらくこれは衛星都市に降られてる数字がそのまま第いくつと表記されてそのあとに王子や王女とついてるに過ぎないのだろう。

つまりあくまでも全員が対等な存在だということだ。

だからレースのような催し物をするのだろう。


そして勝者が10年間全ての都市の代表になり国を運営する。

それがこの海洋国家ルグニカの在り方かそんなところなのだろう。

もともとは海賊が集まって出来た国ともアプリコット先生は言ってたからな。

たぶん、そのへんはかなり揉めて今の状態になったんだろうな。

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