第107話
「グランカス、俺の事は逃げられたという事にする事と時間を稼ぎたいので、城壁の外に逃げられたという事にしよう」
「分かった」
俺がテーブルの下に隠れたと同時に部屋の扉が開け放たれた。
「グランカス!クサナギは手に入れたの?」
何度も待たされて気が立っているのだろう。あんな感じの子ではなかったのに非常に残念だ。女は心の中で思ってる事と外面は違うって言われてるもんな。そういえば、前に言われた事があったな。女が褒めてる9割は建前だと……。
「それがな、逃げられて城壁の外に逃亡されたんだ」
そのまんま説明すんのかよ!と俺は心の中で突っ込みを入れた。もう少し捻りとか加えろよ!
「そう。やっぱり奴隷商人ごときじゃ使い物にならないね。もういいから……あとはこちらでするから」
「ど……奴隷商人ごとき……」
きっとエメラスには聞こえてないんだろうな。グランカスの小さな呟きは身体強化された俺にだけ拾う事が出来た。
エメラスが部屋から出て行ったのを確認して俺は机の下から出た。
そしてグランカスを見ると、とても落ち込んでるように見えるがまあ落ち込んでるんだろうな。
「まぁ気にするなよ!」
勤めて明るく接してやることにした。自分の仕事をバカにされれば落ち込むこともあるだろう。
「奴隷商人が人の人権を貶める屑な商売だとしても胸を張って生きればいいさ!」
俺は手加減して背中をバンバン叩きながら慰める。
「クサナギ!お前は慰めてるのか貶めてるのかどっちなんだー!」
はて?グランカスが怒りだしたぞ?慰めていただけなのに訳が分からん。
やっぱり俺には人を慰めるのは苦手らしいな。
「さてと……総督府の娘が帰ったとして向こうは俺を捜索する可能性が非常に高いと言うか絶対する」
俺の言葉にグランカスが頷く。
上級魔法師なんて国にそう何人もいる者じゃない、それを簡単に見逃すなど為政者足りえないだろう。
それにあまりにも長い時間、俺の姿が見つからないとおかしく思うだろう。
元々無一文でしかも冒険者に登録できないのだから、生活の糧を得られないだけで十分相手に注意を促すことになってしまう。
そうすると痛くない腹まで探られてしまう。
つまり……協力者がいるのでは?と推察されるだろう。
そうすると俺なら襲った人間を配下に加えると考えるしそうじゃなくても何かしら俺を襲った相手が隠してると推測する。
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