第108話

「そうするとあまり時間がないな……稼げて3日って所か?」


「稼げて?何が3日なんだ?」


すこしはグランカスは頭を使えよ思うが、教えておいた方がいいな。


「ああ、それは簡単に言えば俺は元々無一文だったからな。普通に考えればお金がないと生きていけない、だから協力者がいると思われるまでのタイムりミッドだ」


「なるほどな、でも冒険者になればいいんじゃないか?」


俺はそれは無理だと伝える。


「市民権がないのか?なら発行してやろうか?」


「ふむ……」


それも悪い手ではないのだが……って出来るのかよ?


「市民権って簡単に発行できる物なのか?」


「俺達は奴隷商人だからな、奴隷用の市民権を発行する権利は総督府から許可が下りてる」


「なるほど……だがそれはやめておいたほうがいいな」


「どうしてだ?」


「お前は少しは物事を考える癖をつけろ!まずな、相手が考える事を考えろ。俺の今の現状が、無一文でドレス姿だろ?それだと相手はドレスを売って換金してお金にする事とかを考えるわけだ、そうすると古着関係や洋服、布を含めた買い取りをしてる店には総督府の目が光る事になる。

次に、冒険者ギルドにも総督府は張り込むだろうな。いくら登録できないとは言え何かがある可能性も無いわけじゃないからな」


「そういうことか」


グランカスは納得したように頭を上下に揺らしていたが、俺は今後の事を考えていく。

まず相手を騙せるのは最長3日、最短では1日から2日程度だろう。

それ以上は、総督府が違和感に気づく可能性が非常に高い。

他の海爵の情報も欲しいんだが、どうしたらいいものか。


「なるほどな……」


俺はお金を調達するいい方法を見つけた。





海洋国家ルグニカに存在する衛星都市スメラギと衛星都市エルノの中間に位置する街道で草薙と騎士たちが対峙していた。


「とうとう見つけたぞ!クサナギ!総督府に刃向う逆賊め!」


「……」


「貴様の捕縛命令がスメラギ総督府から出ている、逃げる事はできないぞ?」


金属鎧(フルプレート)を身に纏った12人の騎士たちが腰から獲物を抜き口上を上げてくる。

さて、今日も稼ぎの時間だ。




「……ふむ……なかなかの稼ぎだな」


殺してないがヒール講座を施した騎士の方々は、その場で燃え尽きたように座っていた。


「金貨71枚と銀貨151枚と銅貨77枚か」


日本円に直すなら金貨が1枚1万円、銀貨が1枚1000円、銅貨が1枚100円だから868700円の稼ぎか……まぁまぁの稼ぎだな。


「勇敢な勇者であり偉大なる騎士の皆様?」


俺はニコリと微笑みながら、俺のヒール講座を体験して身も心も解された方々へ声をかける。

真っ白に燃え尽きた騎士の方々は俺を見て失神する者や泡を吹くものなど様々だ。


「お仕事で体が疲れましたらいつでもお越しくださいね?ヒールをいたしますから」


あっ、最後の人も失神した。

どうやら俺のヒールはずいぶんとお気に召して頂けたようだ。

それにしても、ずいぶん稼げたな……。

これで総督府スメラギからの金銭供与は4回目になる。しめて金貨381枚銀貨871枚銅貨1344枚だ、硬貨を入れた袋もかなり大きくなっており移動にかなり困るんだがそれは後で考えるとしよう。

さあ、奴隷解放を歌ってる海爵が治める衛星都市エルノまではあと3日の距離だ!


きっと素晴らしい都市なのだろう。

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