第77話

「アリス様、どうされましたか?考え事ですか?」


私は思考の迷宮に陥っていた意識をユリアに引き戻された。

ユリアは、両手にお皿を持っていてたくさんの料理を載せている。


「いいえ、何でもないわ」


そう私は決めたのだ。もう私やユリアやお母様のような悲しい思いはたくさん。今から私は、権力で王妃の座を奪おうとするシュトロハイム家とユウティーシア公爵令嬢を断罪する。

そして、御祖母様の祖国であるリースノット王国を救う。無能な者が上に立つ事は罪なのだから……。


「ユリア、お願いがあるのだけどいいかしら?」


「アリス様、どうかされましたか?」


私の話を聞くにつれてユリアは顔色を変えていく。でもユリアは最後に、本当に後悔はしませんね?と聞いてきた。


「ええ、もちろんですわ。私達はその為にここに来たのですから」


ユリアは私の言葉に頷くと夜会場を出ていく。その後ろ姿を見ながら私は、ゆっくりと深呼吸をした。これは過度な内政干渉だけど今を置いてリースノット王国を守るためには今を置いて他にはない。軍も私の独断で国境に配置している。王家や3公爵家はその対応で夜会までは目が届かないはず。しばらくしてユリアが戻ってくるのを確認する。どうやらうまく事が運んだらしい。その証拠に、夜会場内に警備隊にエスコートされたユウティーシア公爵令嬢の姿を確認した。


さて始めましょう。


私は、すでに全ての段取りを終えた事を確認し夜会場の中央に向かう。


そして大きく息を吸う。

お母様見ていてください、きっと誰もが泣く事がない世界を私とユリアが作って見せます。

これはその一歩です。


「初めてまして!私は、アリス・ド・ヴァルキリアスと申しますわ!!」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る