第74話

ただユリアは、何か臭いと部屋を漁っていたところキノコが生えた黒服を発見し絶叫した。ユリアは、カリナに助けてもらった恩を返す意味もあったが助けてもらったあの夜、神秘的なまでに綺麗だったカリナにはきちんと綺麗にして欲しかったこともあり洗濯をがんばった。そんな彼女でもユニコーンで支給された黒服の制服にはかなりの手間と労力を割いていた。


「もう大げさね、放っておけばすぐ乾くわよ」


その言葉にユリアは切れ制服をカリナの手から奪い取るとカリナの顔にタオルを投げつけたのであった。しばらくして制服を水につけ戻って来たユリアはカリナの前に座った。


「それで先ほどの話ですけど、アルド皇帝陛下の側室に決まったというのは本当なのですか?」


「そうよ」


ユリアの問いかけにカリナは短く答える。

カリナの顔を見てユリアはため息をついていた。


「どうしてアルド皇帝陛下は、こんなズボラで掃除も洗濯も料理も出来ないデリカシーの無いカリナを側室にしようとしたのですか?」


とてもひどい言い方であったが当然と言えば当然であった。3年間も一緒に暮らし身近で接していると幻想も抱かなくなるのだろう。最近では歯に着せぬ言い方が増えてきていた。


「もう少し、やさしさを持ってほしいわね。でも否定できないわ。実はね、団長から指示があったの」


カリナの言葉にユリアは、家に時々遊びにくるロウトゥの顔を思い出した。


彼はどこか浮世離れしており一度、話をしたこともあった。そのときに彼の真意がまったく理解できなかった事からカリナはロウトゥが苦手だった。


「それで何て指示だったんですか?」


「アルド皇帝陛下の護衛よ。特に夜の護衛ね。いくらユニコーンが優れていても寝室までには入れないでしょう?だから陛下の許可をとって側室として護衛に加われるようにしたんだって」


ユリアはその言葉を聞いて開いた口が塞がらない。それはつまり護衛のために結婚すると言ってるようなものなのだ。そんな女の価値を捨てるような指示を出すロウトゥが許せなかった。


「カリナは……カリナはそれでいいんですか?仕事のためだって幸せを捨てるような事をしてもいいんですか?」


ユリアは、カリナには幸せになって欲しかった。だって自分を地獄から救いあげてくれた人なのだから好きな人と結婚して温かい家庭を築いてほしかった。

なのに……こんなのは無いと思ってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る