第73話

カリナの言葉にユリアは、この人は何を言ってるんだろう?という顔で見た。


「私よりも、20歳半ばで行き遅れのカリナがまず結婚するのが先じゃないんですか?」


「そ、それを言われると辛いのよね……」


カリナは、元は男爵令嬢であったが騎士団に憧れた結果、女性初の騎士に抜擢されたのだが暗殺の適正が判明しユニコーンに所属させられた。所属後は、紆余曲折あったが副団長まで上り詰めた。暗殺を生業としてる以上、団長や団員達の信頼は高いが、その秘匿性から結婚は難しい。


結婚するとしてもユニコーン内部からと言う事も出来たが大酒飲みで有名なカリナには近寄りたくないという団員達の立派な理由があったがそれを知らなかったのはカリナだけであった。


そんなある日……。


「ユリア、結婚きまった!」


お酒を嗜みながらカリナは爆弾発言をした。

いつものごとく騎士団の食堂から出来合い物をもらってテーブルに乗せていたユリアはあーまたこの人なんか言ってるよーと冷めた目で見ていた。


「はいはい、それで今度は誰ですか?夢の中の王子様ですか?それともアルド皇帝陛下ですか?」


まったく無駄な事を聞いたとユリアは、茶葉を湯呑に入れ湯を注いだあとにカップに紅茶を注ぎ口をつけようとしたところで


「そう!そのアルド皇帝陛下の側室に任命されたの!」


カリナの発言と同時にユリアは口から紅茶を噴き出した。

ユリアが噴き出した紅茶は、カリナに直撃した。

カリナはお酒を片手に持ったまま団員に支給されている黒服を取り自分の体を拭き始めた。


「あああああああああ、せっかく洗ったばかりなのにいいいい」


リビングにユリアの絶叫が木霊する。一角獣のエンブレムが縫い付けられている騎士団ユニコーンの黒服は、耐刃に優れ衝撃も緩和し魔法のダメージも緩和すると言う優れた物であったが洗うのも魔道具を使う事が出来ず全て手洗いで乾かすのも体温を極寒で維持するため気密性が高いために時間がかかるという主婦泣かせの制服であった。そして騎士団ユニコーンはその秘匿性から業者を安易に使う事が出来ない事もあり、団員一人一人が自分自身で洗うという苦行と化していた。それでも男ばかりの職場だった事もありカリナはまったく気にしていなかったし一か月も洗濯しない事など少し普通の人からずれていた。


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