第65話
――とスレインが聴いてきたので昔の事を思い出していた事だけを伝える。
「いや、実はさ……俺達が初めて王都警備隊に入隊した時の事を思い出していたんだ」
「王都警備隊に入隊したときの事か?あんときは酷かったよな。夜だって言うのに酒を抜くために井戸水ぶっかけてきたからなー。思わず手が出ちまった」
「そのあとお前、ボコボコにされてたけどな……」
「言うなよ……」
二人して初日に警備隊隊長に足腰立たなくなるまで訓練させられた事を思い出し苦笑した。
「さてと……仕事を続けるか」
「だな、そろそろ見回り交代の時間だし」
30分後、王都警備隊の見回り要員と交代した俺とスレインはいつもの酒場に向かって町を歩いていた。
「なあ、お前さ……彼女どうすんの?相手の両親とはもう顔合わせしたんだろ?」
「ん……そうだな……」
スレインはどこか煮え切らない様子だった。
「なんだよ?何か彼女に不満があったりするのか?」
俺がスレインに紹介された彼女は、明るく活発な印象を受ける女性だった。
普段ちゃらい雰囲気を持つスレインには丁度いい子だと思っていた。
「そうじゃないんだ、俺達っていろいろしてきただろ?だから迷惑なんじゃないかなってさ」
「たしかによく町で喧嘩したり暴力振るって親に揉み消してもらってたからな……黒歴史だよな」
「でもさ、それをひっくるめて彼女も彼女の両親も良いって言ってくれてるんだよ」
「なら良いんじゃないか?」
俺の相槌にスレインは歩いていた足を止めた。
「そうじゃないんだよ、実家の清算が終わってないのに俺みたいな男と一緒になって
彼女が幸せになれるのかなって思うんだよ」
そう呟いたスレインの顔は、今まで見た事ないほど真剣な表情だった。
王都警備隊に入隊してから6年が経った事で、スレインもずいぶん変わったんだなと思った。
俺達はもう20歳になった。
20歳になるまでは大半の人は結婚する。
やはり結婚を躊躇してたのは過去の柵の問題が大きかったんだろう。
でも俺達もそろそろ前に進まないと行けないと思う。
だから俺はこの腐れ縁の背中を押すことに決めた。
「大丈夫さ、あの頃の俺達とは違うんだ。何かあれば俺も力を貸すし、マルス殿や警備隊長のイースも力を貸してくれるし俺達の給料ってかなり高いんだ。自信をもてよ!」
俺の言葉にスレインは頷いた。
「じゃ、今日はスレインの結婚祝いってことでパーッと酒場でスレインの驕りで飲むか!」
「おい!ふざけんな!!」
たまにはこういう日があってもいいのかも知れないな。
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