第64話
王宮内では、クラウス殿下のことを「賢王グルガードの唯一の失敗作」「出来損ないの王子」などと揶揄する者もいたが殿下の父君は愛情を注いでおられた。
それを間近で見せつけられていた俺とスレインは、家族愛を受けられる殿下と受けられない俺たちを比較してしまっていた。
ある日、殿下の遊び相手を務めてるならば身を守る術が必要だと父上に言われ俺とスレインは殿下の勉強の時間の間は、王宮騎士達に混ざって剣を振る訓練をする事になった。父上達の期待に答えようと俺たちは一生懸命取り組んだけど、辛かった。
そんなある日、俺とスレインは聞いてしまった。
父上が息子が殿下を守りたいと率先して剣術を学んでるのですよと国王陛下に話してる事を。
俺たちは、親の自尊心を満たすためにしてたわけじゃなかった。それなのにそんな事のために俺たちはやらされていたのかと思うと馬鹿らしくなった。
練習もサボりがちになり、俺たちはいつも練習時間は騎士団の宿舎裏で時間を潰していた。やることがない、親の見栄のためだけの殿下のごきげんとりに嫌気が差していた。
そんな俺たちの前に子犬が通りがかった。少しだけ憂さ晴らしをしようとしただけだった。でも気がついたら殿下に止められていた。
殿下は、真っ直ぐ俺に視線を向け両手を広げて子犬を庇っていた。そして気がついた、俺は殿下に向けて木刀を振り上げていたことに……。
俺はすぐに木刀を下ろし数歩下がりながら俺は、謝罪の言葉を殿下に伝えた。俺の後ろからもスレインが謝罪の言葉を言っている。
だが、殿下の護衛である王宮近衛騎士団のマルス殿の前ではどうにもならなかった。俺達は、その場から逃げた。
そして、逃げて逃げて気が付けばいつもの町の酒場にいた。酒を飲んでいたが俺とスレインは明日からどうしたらいいものかと考えた。殿下に怪我がないとは言え王宮内で問題を起こしたのだ。下手をすれば実家からの絶縁どころか軟禁もありうる。ただ、殿下は俺達の言い訳を聞いてるときに呆れ顔で国王陛下様に言わないと言っていた。
だけどあそこには王宮近衛騎士団のマルス殿が居た事から間違いなく国王陛下様の耳には入ることだろう。
俺やスレインはそれぞれ実家に呼び出された。そして2人共、目出度く実家から絶縁状を叩きつけられた。
絶縁にあたり体裁が悪いからとある程度の金品はもらっていたが数ヶ月でなくなる金額だ。町の酒場に行けば先客であるスレインがいた。
俺達は二人とも今後のことをどうするか話しあったがどうしたらいいかわからず仕舞い。そんな俺達に声をかけてきた男がいた。よく見れば、王都警備隊の服装をしていた。
男は、王宮近衛騎士団のマルスと懇意にしてるらしく俺達の面倒を見るように頼まれたらしい。
どうせ行くところなんてどこにもない。
王都警備隊の男についていくのもいいだろう。
俺とスレインはこうして今の職、王都警備隊に入隊した。
そんな過去の出来事を考えていると
「どうかしたのか?」
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