第61話

「さようでございます」


僕は彼の事は知識でしか知らない。たしかウラヌス家はリースノット王国建国時から王国を支える三大公爵家の一角で魔法部隊を代々取りまとめてきた家系であり二百年の間に、軒並み魔力量が低下した貴族家において上級魔法師をつねに排出している名家だったはず。


しかも魔法式構築研究室長官を代々務めていたはずだ。いままで魔法師としての力が初級の下級だった僕にはまったく関わりない人物であったがそんな彼が何故?

僕には不思議でならなかった。


「父上、どうしてウラヌス公爵家の当主がこのような時間に?」


「クラウス、それはお前が一番心あたりがあるんじゃないのか?」


父上が僕が出す言葉が予め分かっていたかのように、僕に問いかけをしてくる。父上の言葉には確信めいた物が込められてるのが分かる。そう僕が少女に白い石を渡されて子犬を助けて気絶した後に目を覚ましてから世界の見え方が変わっていた。

世界の全ての魔力の流れが理解できる。


実際、父上やエルド、バルザックの魔力の流れと強さが感覚的に理解できてしまっている。

あの少女からの影響の可能性が非常に高い。


「それは……僕が庭園に居た事と関係がありますか?」


「ああ、あるな」


やはり……父上の答えで確信する。たしかにあれだけの魔法を行使すれば誰にも知られないと言うのはあり得ない。


「これを」


エルド公爵が僕に厚さ3センチ程の真っ新な石板を差し出してきた。僕はそれを受け取ると父上の方へ視線を向けた。

父上が頷くのを僕は確認すると手元にある石板に視線を落とす。それは真実の鏡とも呼ばれるこの石板であり一度だけ所有者のステータスが鑑定できる魔道具であり魔法帝国ジールで作られている。自分のステータスを視覚的に見れると言う事で庶民の間でも流行しているものだ。


以前計ったときは10歳の時で全ステータスと生命力は平凡で、魔力量は2桁だった。2桁、それは初級魔法師の中でも下位ランクだ。上級魔法師である父上の魔力量は5桁あり僕とは桁が違う。


「クラウス、どうかしたのか?」


「いえ、大丈夫です」


早くステータスを鑑定しろと促してくる。僕は計ることを躊躇した。訓練で魔力量が上がったと言っても、魔力量の大小はやはり産まれた時の素質に大きく依存する。だからどんなに頑張ってもそんなには上昇しない。訓練を開始して毎月、父上が石板を渡してきて測っていたけど増えても1か2だった。そのたびに天才と呼ばれた父上に失望されるんじゃないかと鑑定のたびに怯えていた。


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