第59話

「えい!」と小さな掛け声をかけていた。

今のこの場に不釣り合いな掛け声。

でも、それは劇的だった。

少女が手に握っていた何の変哲もない石が白く輝く宝石に変わったのだった。


「これを使ってみてください!はやく!」


「あ……ああ」


僕は、少女から差し出された白く輝く宝石を手に取った。

その途端、世界の見え方が変わった。

今までの見ていた世界と違い、世界が色鮮やかに見える。


「早くしてください!はやく!」


少女の切羽詰まった声に僕の意識は引き戻さた。


「ああ、子犬がああああ」


何故か少女はすごく焦っている。

そうだ。早く回復魔法をかけないといけない。


僕は回復魔法をかけようと魔法式を頭の中で組み上げていく。

いつもはすごく時間がかかる初級回復魔法式が瞬時に頭の中で組みあがった。

そして僕はその事に驚愕した。


これなら出来るかもしれない!

この子犬を助けられるかもしれない!


僕は魔法師の先生に教わった上級回復魔法式を思い浮かべる。

いつもはすぐ霧散してしまう魔法式が今なら鮮明に克明に思い浮かぶ。

まるで何で今まで出来なかったのか不思議なくらいだった。


「フルヒール!!」


僕の言葉に答えるように周囲の魔法力が流星のように集まっていき僕を中心に巨大な緑色の巨大な柱を作り上げた。

段々と薄れていく意識の中で


「クラウス王子!」


「殿下!!」


僕の身を案ずる声が聞こえてくる。

そして腕の中で身じろぎし生命の脈動を伝えてくる子犬の力強い生命力。

僕は子犬を助ける事が出来たようだった。


そして意識を失う直前に僕に向けて、よく頑張ったねと言う微笑みを見せた天使を見て僕は気を失った。




気が付けば日もとっくに落ちていて夜の半ばなのだろう。

僕は、寝かせていたベットから立ち上がる。

部屋どドアを開けて通路に出ると付き人であるマルスとエルスが立っており

助けた白い子犬もマルスの腕の中でもがいていた。

どうやらマルスは犬に嫌われてるようだ。


「もう大丈夫なのですか?」


「ああ、体調はまったく問題ないしむしろいいくらいだ」


恐らく魔法の使いすぎて倒れたのだろう。

いつもは魔法力が尽きて倒れると目が覚めても吐き気がする程、気持ち悪いのにそれがまったくない。

むしろ全身に魔法力が漲ってるようで目を凝らすと大気中に存在する今まで見る事が出来なかった魔法力を見る事が出来た。


「マルス、教えてもらいたいのだが」

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