第58話

中級魔法師クラスの腕前を持つ腹違いの6歳と7歳の王子達の方を王国重鎮達は押してるのだから。


クラウスは自分の腕の中で時折、血を吐きながらも体温を下げていく子犬を見て自分の無力さを思い知った。


「僕がもっと強ければ、僕がもっとうまく魔法が使えたなら、僕がもっともっと周りを見ていられたなら」


いつの間にか、涙が頬を伝い自分の手の平の落ちていく。

そしてそれをいつの間にか抱きしめていた子犬が舐めていた。

こんな不甲斐ない僕の事を案じてくれているのかと初めて僕は自分がどれだけ甘えていたのか理解した。


僕が抱えていた子犬の鼓動が小さくなっていくのが分かる。

もう命の灯が消えかけているのだろう。


「ごめんな……助けてあげられなくて」


僕の言葉に反応したのだろう。弱弱しく子犬が鳴いた。


「えーと、ワンちゃん。怪我をしているのですか?」


僕は突然、聞こえてきた美声に顔を上げた。

そこには、とても可愛らしい女の子が立っていた。


「あ、ごめんなさい。でもとても辛そうだったので……」


その女の子は、大きな瞳を潤ませながら僕に声をかけた後にじっと僕を見つめている。

大きな黒い瞳の視線が僕と子犬をいったりきたりしている。


「うん、もうね……長くないんだ。僕がもっと魔法力があれば回復魔法で助けられたんだけどね」


僕は自分の力の無さにすっかり自信を無くしてしまっていた。

でも彼女はまっすぐ僕を見つめていた。


「そうなんですか、でも洋服がそんなになってまでも助けたいと思う気持ちはとても尊いものだと思います」


彼女と話してるとまるで僕が子供のような錯覚を感じさせる。

僕の弟と同じくらいの6歳かそこらな子供なのに何でこんなに冷静でいられるのだろう。


「それで、魔法力を補えれば助けられるのですか?」


「ああ、だがそんなことなんて不可能だ」


そう、魔法力を補う疑似魔法石と呼ばれる物はこの国では発掘されない。

発掘されるのは迷宮だけだ。

それに魔法力と言うのは国を守る力に直結する。

基本的に自国からの持ち出しは禁止されている。

だから、リースノット王国では対外貿易でわずかしか手に入れる事が出来ない。

国王陛下ならいざ知らず王位継承権のみの立場では使う事は許されない。


「これでいいかな?」


僕の考えをよそに庭園にある石を少女は掴むと


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