第48話

嫌、そんな訳がない。彼女は聡いしお金を持っていない。それなのに出ていけるわけがない。

考えてるだけだと分からない。

まずは周囲に聞き込みをしてから……。


玄関を開けて外に出ようとすると何かにぶつかった。


「―――きゃっ」


俺とぶつかったユーヤが倒れる前に、彼女の腰を左手で抱きかかえる事が出来て倒れるのを防ぐことが出来た。


「―――ユークリッド。突然、ドアを思いっきり開けるなんて危ないです。もう少しゆっくり開けないとダメですよ?」


いつも通りの彼女が目の前にいた。

そしていつもどおり俺に語りかけてきた。


「お前は何してるんだ!!!!」


「えっ?」


「一人で外を出歩くなと言っただろう?何かあったらどうするつもりだ?」


彼女の顔を見て安心したと同時に怒っていた。

俺が見てる間にも彼女は茫然として俺を見上げてくる。

それが余計に腹立たしい。

この俺がどれだけ先ほど心配していたのか、今日一日彼女をどれだけ心配していたのか分からないのだろうか?


「……ちがうんです。お水を汲みにいってたんです。お掃除してたらお水が「そんな事はどうでもいい!」」


「どうして分からないんだ?お前は自分が常識が無い事くらいは分かってるだろ?」


「で……でも」


「その辺にしておきな、ユー坊。女は所有物じゃないんだよ、少し頭を冷やしな」


今まで気が付かなかった。

ユーヤの後ろからミランダが近づいてきた。


「ユーヤにも否はあったかも知れない、でもねそんなにガミガミ言ってどうなるのさ?ユーヤは生きた人間なんだよ?それを家から出るな?ってアンタずいぶん偉くなったね。貴族みたいに気に入った人間を閉じ込めて愛でるつもりなのかい?」


ミランダの言葉に俺は、ユーヤが生まれてからずっと家から出してもらえず監禁されていた事を思いだす。


「違うんです、ミランダさん。私が全部悪いんです、約束を守らなかったから」


ミランダと俺の間に入ってユーヤが俺を庇ってくれるが、ミランダはユーヤを抱きしめると俺を見上げた。


「ユーヤは今日は、うちに泊めるからアンタはしばらく頭を冷やしな」





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