第47話

そんなユーヤが、俺は……。


「ユークリッド、見てみろよ隊長達だ」


途中で思考の海から引き揚げられた俺は、スレインが指差している方へ視線を向ける。

そこはちょうど店内の壁にガラスがはめ込まれていていた事もあり王都の通りが見る事ができる。


「なんだ?あれは普通の探査魔法じゃないな?」


俺は一人つぶやきながらも目を凝らす。

俺たちの隊長が使ってる魔法は初級魔法師が使う生命体の大雑把な位置を確認するような探査魔法ではなく、それよりも上位の魔法だった。


「―――あの魔法は、指定探査魔法だ」


スレインの話に俺は眉を潜めてしまった。

犯人を追う際に使う魔法、それも初級魔法師が使える魔法の中でも上位の魔法を隊長達は仕事を休んでまで使って何かを探している。


「凶悪犯でも逃げ込んだのか?」


スレインの言葉に俺は違うと思った。

それなら王都警備隊の俺達にも話は降りてくるはずだからだ。


俺達にも降りてこない話で魔力量が多い隊長クラスを総動員して特定の人物を探してる?誰を?

考えがまとまらない、それでも膨らみ始めた疑念は消せずにいる。


「お、隊長達も解散するみたいだな。あまり多様できる魔法じゃないしな」


スレインは一人納得していたが、特定の人物を探してるのに焦っていない?

つまり王都に潜伏していて犯罪性になる可能性は低い人物だけど探す必要のある人間……。


そこで唐突にユーヤの顔が思い浮かんだがすぐに脳裏から追い出す。


彼女は王都の警備隊の隊長を総動員してまで探すような人間には思えないからだ。

弁論が得意なだけの見た目は15歳くらいの少女。

彼女を探してる可能性は低いと思った。



魔法書を購入した俺は、そのままスレインを分かれて家に向かって歩を進めた。

俺が購入したものは生活魔法と防御魔法と回復魔法と身体強化の4冊の魔法書だった。どれも初級魔法師が使う魔法の習得方法が書かれてる。これが使えるようになるかどうかは本人の資質が大きく影響してくるし俺が使える魔法は身体強化の魔法だけだ。


10分ほどで、家に着きドアを開けようとすると違和感を感じた。

ドアに鍵が掛かっていない。


たしかに仕事に出る前には鍵をかけたはずなのに鍵が開いていた。

家に鍵を掛けない人間なんかこの王都には限られる。いくら治安が他の地方と比べていいとは言っても鍵をかけないのは……!


「ユーヤ!!」


扉を開けて中に入ると、ユーヤの靴が無くなっていた。

部屋の中を見ても荒らされた様子はなくいつもよりも部屋の中は綺麗に磨きあげられてはいたがユーヤの姿が見えない。

俺が仕事に行く前に、俺と一緒じゃない時は家から出るなと言った時にユーヤは分かったと言ってはずだ。

其れなのに居ないと言うのはどういう事だ?


まさか……出ていった?

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