第35話
「こういう風に堂々としてる方が見つからないんだ、王都警備隊の俺の経験を信じろ」
「はぁ……」
まぁ治安維持してるコイツが言うんだからそうなんだろう。それにしても聖書もどきには面白いことが書かれていた。
俺はその項目を見てやってしまったと思った。そこには遺伝子工学に通じる交配の劣化内容がかなり大雑把に書かれていた。ただそれだけではたいした意味をもたない内容。でもあの夜会で、質問を投げつけてきた貴族に俺が答えた事で聖書の意味はかなり正確に伝わってしまったと後悔した。
そして聖書に書かれてない具体的な遺伝子欠損や遺伝子劣化から来る先天的疾患について説明した時、すぐに理解していたのはきっと……。
これはかなり不味い展開になったのかも知れないな……。
「お姉さん!エールを一杯お代わり!!」
男の声に、女性があいよーと答え厨房へ向かっていく。
ここはリースノット王国王都の市場近くに店を構える食堂であった。
店内に並んでいる質が良いとは思えないテーブルと椅子に男たちは腰をかけて食事をしていた。
食事である喧騒とお酒を昼間から注文し飲む男達のおかげで店内はかなり騒々しい
そんな店内の空気にそぐわない音が店内に鳴り響く。
カランカラーン……。
食堂の扉の上部に括り付けられた鐘が扉が開かれた反動で鳴ったのだ。
店員は店内を見渡して来客に対応できるか確認していく。
「(うん、カウンター席は全部埋まってる……テーブル席は……2人分だけ空いてる)」
店員は2人以上、来客がきたら対応できないなと開かれた扉から入ってくるお客へ目を向けた。
そして目を見張った。
男性専用とまで言われまったく女性が寄り付かない土木作業員御用達とまで言われていた
そんな店内に同姓である自分ですら目を見張る美しい少女が店内に足を踏み入れてきたから。
店内で食事をしていた男性達も、また暑苦しくなるなとどこの組の者が来たんだと鋭い視線を鐘が来客を告げた扉のほうへ視線を送り食事する手を止めた。
「やっぱり3時間も市場を歩いてると疲れてくるわよね」
店内に入ってきた少女はとても美しかった。
透き通った白い肌に、白いワンピースを押し上げる大きな胸にスラリと伸びた手足。
そして精巧に配置された顔のパーツ、どれか一つをとっても異性を引き付けて止まないものであった。
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