第16話
「ユウティーシア、お前を呼んだのは他でもない。一週間後に王城で開催されるパーティでの社交デビューが決まった事を伝えるためだ」
「……」
前からアプリコット先生に聞いてたは言たがそんなメンドクサイ事を俺にしろと?俺が何も言わなかった事を肯定と受け止めたのだろう。父親は頷くと掴んでいた青年の腕を離した。
青年は俺の目の前まで来ると、膝をついた後に俺の腕をとり手の甲にキスをした後に立ち上がった。
「始めまして、私の名前はクラウス・ド・リースノットです。美しいと伺っていましたが、ここまで美しく成長なさるとは……」
父親に負けず劣らず、美形な青年であった。
「突然の事で驚かせてしまって申し訳なかった。私は、将来の貴女の夫となり国王となります。来週のパーティでは、ユウティーシア嬢、貴女のエスコートをさせて頂きます」
「――――――分かりました」
将来の旦那様であるクラウス殿下が帰った後、部屋に戻った俺は夜会用のドレスの仕立てをしていた。
寸法を針子さん達が測っていく。
ずっと立っているだけでかなり疲れてくるがそれは気力で何とかする。
「お嬢様、これとか如何でしょうか?」
「いいと思うわ」
適当に返事をする。どうせどれを着てもお母様に似てるのだから栄えると思うし。
それよりも早く終わらせてほしい。
内心、男と結婚をする事になるなんて考えもしなかったとため息をついた。
結婚すると言う事は、男性とそういう事もしないと行けない。俺自身、男として物事を考えてるからしそういう事を考えると憂鬱になる。
たしかに、お父様とお母様には育ててもらった恩がある。
貴族にとって血を残すことは重要な事も分かってる。
でも、できば独身でいたいけどほかの人はどう思っているのだろう?
「エリーチカ、今回のお話は伺ってまして?」
「ええ、それはすばらしい事ですわ!お嬢様。ご婚約おめでとうございます」
なるほど、そうなるか。
貴族が王家に嫁げる事なんて名誉な事だものな、でもな……。
「あっ……」
「どうかなさいましたか?」
「いいえ、何でもないわ」
そうか、そういう事か。上流貴族の勉強と言いつつ、帝王学や身を守るための基礎薬学を重点的に教え込んだのは王妃の教育の一環だったのか。
そう考えると、帝王学の勉強をしたのは5歳くらいからだった。つまりかなり前からこの婚約の話は上がっていたことになる。どうしよう……。家に迷惑をかけずに出奔する方法を考えねば。
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