第8話
「お母様?」
俺の声をかけられた母親はしばらく目を潤ませていたが、すぐに勝手に執務室に入って本を持ってくるのは淑女らしくないと何度も怒られた。その日の夜、父親が母親を伴って部屋に入ってきた。
「貴方、こんなに遅くに無理をさせては……」
「少し黙っていなさい。ティア、この鉱石を握って魔力を集めてみなさい」
俺は、何かまずい事をしてしまったのかと不安になっていたが
「早くしなさい!」
父親に怒鳴られた事で魔力を集める事にする。大気中の魔力が集まるイメージ、それも光が鉱石に収束していくイメージを頭の中で明確に構築していく。すると……
「まさか?」
父親の驚くような声で、俺も目を開ける。すると手の中の鉱石が先ほどまで真っ黒だったのに今では白く宝石のように光輝いている。
「貴方、もしかしてコレは?」
母親も驚いているようだが、どうしたのだろうか?
「―――ああ、間違いない、これは……白色魔宝石だ」
父親は喜びのあまり声を震わせていた。
------------------------- 第5部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
王城への招致
【本文】
翌日から稽古の合間に白色魔宝石を作る仕事が追加された。ただ、そんなに作らなくてもいいと言っていたから朝、昼、夜で1個づつ作る程度で一日3個ほどだった。
3歳から始まった稽古と白色魔宝石を作る仕事も2年が過ぎると効率よくこなせてきた。午前中に作れるだけ作って部屋の引出に入れておいて朝、昼、夜に1個づつ渡すのだ。
白色魔宝石を取りに来るのはいつもお母様で殆どお父様は顔を見せない。いつも眉間に皺を寄せてるから俺の事がきっと嫌いなのだろう。
「ユウティーシア様、少しはレディらしくなってきましたね」
とかアプリコット先生が俺を褒めてきたが男の精神状態で女らしくなってきましたね!と言われても心のうちは大変、複雑だ。
それよりも問題が発覚していた。俺が今日のお昼に渡す予定の白色魔宝石が全部、机の中から消えてしまっていたのだ。300個くらい貯めておいたはずなのにどこにいったんだろう?また魔力を込めないといけないのか。白色魔宝石を作った後は眠くなるのでいつも纏めて作ってるのに困ったものだ。
「何か考え事ですか?」
俺は頭を振る。
そこで部屋のドアが、ノックの後に入りますよという言葉の後にお母様が入ってきた。
「少しティアを借りられるかしら?」
お母様の言葉にアプリコット先生は「分かりました」と言いながら俺をお母様に差し出した。
お母様の表情を見ると少し怒ってるような気がするけど気のせいだと思いたい。俺は、お母様に抱きかかえられたまま部屋を後にした。
抱きかかえらえたまま移動していると向かってる先は、執務室のようであった。お母様は執務室の前に立つと数度ノックをして部屋の中からの「入れ」と言う入室許可が下りてから執務室に俺を抱き抱えたまま足を踏み入れた。
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