118:バスリングの開拓

「ふぅ」


 一面に広がる砂漠をサムゲン大森林のように緑化していた。もう1週間は経つだろうか。人が住む分には十分な広さを確保できた。

 畑を作り作物を植えペルシャが連れて来た家畜を揃えて生きる環境を整えた。


 ──バスリング──

 この島をこう名付けた。ユニが『なぎさ島』としつこく言うので、そのままその名前になってしまいそうだったので無理やり名付けてしまった。お風呂と温泉の英語読みを文字ってくっつけただけだ……。


「なぎさちゃん、もう少しマシな名前なかったの。意味が分からなければ何とも思わないんだけど、明らかにお風呂と温泉を文字ってて恥ずかしいんだけど」


 アカリがいると日本の知識から何かを持ってきても直ぐにバレてしまう。


「なぎさ、ユニの武器はどうなったのじゃ。土地づくりにかかりっきりで落ち着かないのじゃ」


「ユニくん! 僕がただこの地を開拓していたわけじゃないんだよ。合間を縫って新しい武器を作っていたのだよ」


「なぎさ、何か変な物を食べたの? 何かおかしいけど」


「なぎささん、どこか壊れちゃったのですか? わたしが2人きりで治してあげますよ」


「ウタハはいい加減にその発想をやめるのじゃ」


「ハハハ。ゴメンゴメン。ちょっと根詰めすぎて疲れてたんだよ。はいこれ」


 ユニに新しい武器を手渡す。どんな武器がしっくりくるのか構想から完成まで随分と時間を要した。


「なんじゃこれ、3つの棒が鎖で繋がれておるのじゃ」


「それはね三節混って言うんだよ。持つ場所によって攻撃範囲が変わるし、真ん中に魔力を流すと一本の棒にもなるんだ」


 振り回すユニ。真ん中を持ってみたり端をもってみたりと試している。魔力を流すことで一本の棍棒へと変化する。


「面白いのじゃー。なんじゃこれー。初めて見る武器なのじゃ」


「なぎささん、これがどうしてユニさんに合う武器なのですか」


「ユニは大きい武器が好きでしょ。棒化すると2メートル程になるから気に入ると思ったんだ。だけど長いままじゃユニの小さい体で持ち運ぶのはとても不便。そこで3つに折りたためばかなり短くなるから便利で良いかな思ったんだ」


「なぎさちゃんのことだから何か仕掛けを入れてるんでしょ」


 ドヤ顔になって答える。気持ちが高揚して早口になってしまう。


「まあね。真ん中の棍にはドラグナイト鉱石と魔水晶を組み合わせてるんだ。鎖はオリハルコンと魔水晶で魔力が流れると棍が一本になるようプログラムしてある。片方の棍はシナバーというとても重い鉱石にドラグナイト鉱石をコーティングさせて攻撃力を高め、もう一方の棍はドラグナイト鉱石と魔力を放出するようにプログラムした魔水晶を混ぜたんだ。つまり受けた魔力をそのまま放出するから魔法攻撃を防ぐことが出来るんだよ」


「なぎさ……早口で良く分からないのじゃ」


 理解出来ないユニたちに、アカリが代わってゆっくりと説明してくれた。


「それは凄いのじゃ! ユニの三節混と名付けるのじゃ」


 何か微笑ましい。やっぱり子供だ。ユニの馬車にユニの三節混。自分のことをユニと呼び……。というか年齢を重ねてもユニは変わらなそうな気がするけど。



「なぎさ様」

 天女族のひとりウンネだ。


「ウンネさん、どうしたんですかその呼び方は」


「わたしたちはなぎさ様に仕えることにしました。ということでウンネとお呼びください」


「ということで、と言われても……。どういうこと?」


「リリス様、わたしたちはこの島をなぎさ様の家として守らせていただきます。救われたこの心と体をなぎさ様のために捧げたいと決まりました」


「うーん。この場は『うん』と言っておくよ。断ると出て行っちゃいそうだし。ただ、出ていきたくなった時はいつでも言ってね」


「分かりました。命令として受け取っておきます」


「じゃあ、もう一つお願い。他人行儀な話し方と様はやめてね」


「それでは主人と……。いえ、わかりました。なぎさ様も私たちの意向を飲んでくれたように私たちも飲ませてもらいます」


「無理だけはしないでね。ケガをしたら大変だから」


「いえ、何なりと言って下さい。どこかを攻め落とすときや捨て駒にするときでも良いです」


「ちょとウンネ、物騒な事言わないでよ」


 僕とウンネの間にペルシャが割って入って来る。


「なぎささん、ベヌスの守護者って気持ちだけじゃできないんですよ。ドリアラ様も国を守れる種族をキチンと選んでいます。レベルで表すとサキュバス族の平均が45。天女族はそれ以上です。それに天女族は昔から神を護る一族とも言い伝えられているくらいです」


「そういうことなので安心してください。宮殿に色々な武器がありましたのでお役に立てると思います。早速ですがみんなを紹介させてください」


 母:ウンネ ── 子:モンリ  髪色:茶系

 母:リンネ ── 子:カリン  髪色:橙系

 母:テンネ ── 子:マリナ  髪色:青系

 母:アンネ ── 子:プリン  髪色:黄系

 母:モンネ ── 子:マキナ  髪色:紫系


「「「 よろしくおねがいします 」」」



「なぎさも大変ねぇ。一体何人の子を産むのかしら」


 リリスの手には久しぶりにデモンズアクスが握られていた。


「ちょ、待ってリリス。不可抗力。僕は何も言っていないよ」


「ふふふ。まあいいわ。私とアカリが一番ならもうなんでも許せる気になってきたわ。このままいくとなぎさ帝国でも作れちゃいそうね。でも、私が許した人しか結ばれたらダメですからね」


 一体何の話なんだ。これから僕はどうなっていくんだろう。そんな不安を抱えながらタナリに向かうのであった。




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(番外編)

(な)「リリスに練習試合してもらったんだって」

(ユ)「そうなのじゃ、ユニの三節混を試したかったのじゃ」

(な)「それで結果はどうだった?」

(ユ)「丸薬を飲めば割れた角と反応してある程度の強化が出来たのじゃ。リリスは魔法使いだから魔法を吸収するユニの三節混と相性が良いのじゃ」

(な)「本調子ならなんとかなりそうなの?」

(ユ)「それでも無理なのじゃ。リリスの魔法は威力が強すぎて本気を出されると吸収しきれずに弾き飛ばされてしまうのじゃ」

(な)「リリスの魔法って凄いね。その後にウンネたちともやったようだけど」

(ユ)「メイドたちは容赦がないのじゃ」

(な)「メイドって?」

(ユ)「自分たちで言っていたのじゃ。宮殿にあったとか言って色違いの服に着替えていたのじゃ。メイド服と言っていたのじゃ」

(ウンネ)「ユニさん、また練習試合をお願いします。5人同時ならユニさんの練習にもなると思います」

(ユ)「ユニは逃げるのじゃ、ウタハでも捕まえてくれと言っといてくれなのじゃ」

 ユニはその場から走り去った。



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