110:決着

「ユニ、ウタハ。なぎさを助けるわよ。なぎさの想いが聞こえたわ。みんな協力してね」


「「もちろんなのじゃ / もちろんです」」


「みんな想いを込めた指輪を見て」


「「光ってるのじゃ / 光ってます」」


「それをなぎさに投げつけて」


 那由の指にはまっているふたつの指輪、ユニの指輪、ウタハの指輪をなぎさに投げつける。4つの指輪がなぎさに向かって飛んでいく。


「お願い、上手くいって」 ──両手を合わせて祈る那由。


 右手を振り払い指輪を弾き返す魔神なぎさ。 ……弾かれた指輪が光り姿を消した。 ──指輪はなぎさの指に転移して光りはじめる。


 それぞれ想いを乗せた指輪がなぎさの指にハメ込まれる。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ。先にハメられていたふたつの指輪(5話、91話)と合体して6つの指輪が大きなひとつの石となって指輪となった。


「あの石を破壊するのよ! なぎさの想いが伝わって来た。あの指輪の石を壊せば、なぎさが殻を破ってきっと表面に出て来られるわ!」


「凄いのじゃ、あの大きな石なら壊せそうなのじゃ」


「ユニさん、那由さんの薙刀も壊れちゃいましたしどうしましょうか。なぎささんが相手ですよ」


「ムムム…… そうだったのじゃ」


「大丈夫よ! 諦めないで。ユニ、丸薬を飲んでなぎさの石を壊す事だけを考えて攻撃して。ウタハ、わたしと一緒になぎさの動きを止めることだけに集中して援護するわよ」


「はい! 分かりました」


「よし、ユニ、ウタハ、作戦開始!」


 ウタハは弓を射ち、ツタを使いユニの攻撃が届くように手を休めることなく攻撃を続ける。


 アカリは魔法を使ってなぎさの防御壁の破壊を試みる。

 「トリプルトルネード」 ──火、水、雷の魔法が渦を巻いてなぎさを襲う

 「フォーストルネード」 ──火、水、雷、土属性の魔法が渦を巻いてなぎさを襲う


 丸薬を飲んだユニはあらゆる武器を変形させながら、サポートの合間を縫ってなぎさの指輪を狙う。剣に斧に槍に弓、大砲まで作り出して破壊を試みる。しかし『変質』や『燃料湧泉』によって全て防がれていた。


「まったくもう、なぎさの強さは反則ね。どうやってあの力の隙を突けばいいのよ!」


「出来ることをやるしかないです。わたしはなぎささんのために矢を射ち続けます!」


「ユニも負けないのじゃ! どんどん行くのじゃ」


「ふふふ、なぎさも随分と好かれたものね。ちょっと妬けるけど私も負けないわよ」


 

 ズギュルルルルル  ──砂埃を巻き上げるように巨大な火柱が発生する。


 魔神なぎさによって生み出された巨大な火柱。台風のように渦を巻いて間合いを詰めてくる。強力な攻撃に3人は身構えていた。


「でかいのじゃー、これはやばいのじゃー」


「なぎささんは私たちを本気で殺しに来てますよ!」


「全くもう……」 『トリプルトルネード』 ──水、氷、蒸気。『水の三態』を使った魔法によって炎に対抗する。



 炎の渦と『水の三態魔法』がせめぎあっている…… ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ


 ギギギギギ……


 ギギギ……


 ギギ……


 ギ……


 ……



 【【【 ドッカーーーーーーーーン!!  】】】



 水が瞬間的に蒸発したことで大きな爆発を起こした。水蒸気爆発によって宙に投げ出される3人…… 魔神なぎさは1歩も動くことなくその場で仁王立ちになっている。


 なぎさは3人を見失ってしまったのかキョロキョロと探している。宙に飛んでいるユニ、ウタハ、アカリはこの隙に攻撃をしかけた。


「ウタハ、あなたは弓を思いっきりなぎさの角に射って。わたしはその後に氷の魔法でなぎさの動きを止めるわ。その1瞬の隙をついてユニは指輪を破壊して」


「「わかりました / わかったのじゃ」」


 まだ気づいていない魔神なぎさ。


 ウタハは矢に緑の力を溜める、那由は氷の魔法を溜め始める。ユニは最強の剣を作り出すべくイメージを練った。


「いきます!」


 緑の矢を放つウタハ。ウタハの髪矢に入りきらなかったエネルギーが矢に纏わりついて巨大化していく。

 那由は全ての魔法力を使い切るほどの氷の渦を携え時を待つ。

 ユニは角の剣にありったけのエネルギーをこめ始めた。


 ズッドーーーン!!  ──ウタハの弓が地面に突き刺さった。



「テヘッ、外しちゃいました」


 上を見つめる魔人なぎさ。那由とユニは唖然としてそのまま固まった。



 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 


 唸るような地鳴りが響いてくる。



 ズッシャーーーーーーーーー


 ウタハの開けた穴から水が噴き出した。蒸気を纏い周りの温度を上昇させる…… これはお湯。


 噴き上がったお湯は、魔神なぎさがアカリとリリスの魔法を粉砕して作ったいくつもの大穴 (108話)に溜まって温泉を作る。辺りには温泉の匂いが漂っていた。


「お、おんせん……」


 ゾンビのように歩く魔神なぎさ。完全にお風呂に気を取られてしまっている。


「なぎさのやつ。私たちのことは攻撃する癖に温泉には心を奪われるのか! 全くもう…… ユニ、やっちゃって!」


「おっけーなのじゃ」



 角で作り出した剣を両手に持って、空を蹴りミサイルのように飛んでいくユニ。風を切り魔神なぎさの指にハメられている指輪に一直線。



 ガッシャーン!!  ──指輪にはめられた石に突き刺さるユニの剣。鉱石の力なのか魔神まぎさの力によるものなのか剣は石に突き刺さったまま破壊されない。


「キーック」


 那由は空に向かって巨大な風魔法を放ち勢いをつけて魔神なぎさに向かう。そのままユニの足にキックを仕掛け、ユニの武器の威力を増した。


 ギギギギ…… ガッシャーーーン!!



 砕けた。なぎさの指輪にはめられた石が砕けた。魔神なぎさを倒しなぎさを取り戻した瞬間であった。



「ギャーーーーなのじゃ!!」


 ……指輪の鉱石が破壊されたと同時に、ユニの剣(角)も砕けていた。


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