087:海底神殿へ向けて【第6章完】

 コッカオに入ると復興が随分と進んでいることが分かる。ベオカの街並みを再現したような造りが懐かしさを感じさせた。


「なぎささんお久しぶりです。今日も女性を連れているんですねー」


「メメメメタフ村長。人聞きの悪い言い方はやめてください」


「ハッハッハ。冗談ですよ。それで今日は何か用があって来たんじゃないのですかな」



「霊芝草を分けてもらいに来ました。事情があって彼女の故郷で必要なんです」


「イサヤの妻でマーハと申します~。此度は私の故郷を救うためになぎささんに協力を仰ぎうかがいました~」



「ハッハッハ。そんな堅苦しい挨拶は抜きだ。なぎささんの紹介とあっちゃ断れんし、良くしてくれるイサヤ殿の奥さんともあれば尚更だ。それにそこにいる竜崎将軍までいちゃ~これ以上の信頼もないしな」


「ちょっとなぎさ! この村のポーションって霊芝草から出来てるの? 霊芝草といったら伝説の薬草じゃない」


「竜崎は知らなかったよな。元々村人かベオカを出たのは、霊芝草の製法を奪われそうになったからなんだよ。だから製法と栽培は内密にしているんだ。知っているのは、うまく聞き出したアールド王子くらいじゃないかな」


 竜崎は憤慨(ふんがい)していた。会う度になぎさに色々と秘密にされていることを知り、まだまだ秘密にされていることがあるんじゃないかという気持ちが、なぎさから信頼されていないという不安となってイライラしているのだ。


「なぎさ! ことが済んだらキッチリと説明してもらうからな!」


 自分の気持ちが先走っていることを感じ取った竜崎は、心に燻(くすぶ)るイライラを大きなため息とともに吐き出した。


「琴ちゃんは、大人(おっとなー)。私が責任をもってなぎさちゃんから琴ちゃんに説明をさせるようにするからね」


「人のことはいえませんが~ 恋だの愛だのって一筋縄ではいきませんね~」




▽ ▽ ▽

 霊芝草の確約が取れた僕たちは、マーハの屋敷を経由して天界の王城空間にいた。

 アカリは天界に到着するや否や、ペルシャやリリスたちの居る公園に向かった。いち早く合流して楽しみにしていた天界見学の話を聞きたかったようだ。

 


「ペリーヌ王女~ ヨハマ領コツの領主とコッカオ村長の協力を得て~ 無事に霊芝草の取引契約を締結することができました~」



「みなさん、ありがとうございます。これで天界も平和を維持していく事が出来ます。また水の綺麗な地域に引っ越しを考えなければなりませんでした」


「良かったです。これでこの国も平和に生活できますね。でも……また引っ越しというのはどういう事なのですか?」


「実は…… 私たち天女族がサキュバス族の前の海底神殿守護者であったことは前にお話しした通りです。存在を秘密にしてきた種族にとってそこは楽園のような世界でした。しかし、天女族とは水が合わなかったのです。全ての水が海水が元であり、ドライアド族が整備したろ過装置によって生活用水が川や湖に流れていたのですが、羽衣だけは塩が少しづつ侵食して機能低下してきまいた。一度は、ランプの魔人の力で持ちこたえたのですが、それ以上は生活が難しくなったので、この地に引っ越してきたのです」


「そんなことがあったんですか」


「ええ。それで数年前からドリアラ様に守護者として改めてお願いされているのだけど、以前の塩害問題があって考えていたのよ。なぎささんのおかげで受ける決心がつきました」


「そうだったんですか。ドリアラには僕もお世話になったんですよ。それで、ドリアラに聞きたい事があって海底神殿に渡りたいと思っているのです」


「そうねぇ。私たちも海底神殿に渡らないとならないし、マーハを同行させましょう。1人行けば屋敷を使って転移できるからね。問題は…… 海底神殿に渡るためには三柱族の力を借りないといけないの。ドリアラ様に連絡を取ろうと思うと何年かかるか分からないから」


「三柱族って何ですか? 名前からすると、世界の3匹の柱の様ですが……」


「そうなのです。空のシズ、陸のベヒモス、海のリヴァイアサンの3匹。海底神殿に渡るためには、海のリヴァイアサンの力が必要なのです。3柱族は気難しい種族でお願いするのは大変なのですが、私がお願いしてみましょう。先ずは探さないとなりませんね」


「リヴァイアサンですか…… ああ! その竜なら僕の召喚獣です。辺り一帯を壊滅させるから呼ぶなと言われていますが……」


「なぎささんは何でもアリですね~ リバイアサンを従えるなんてとんでもないことですよ~」


「なぎささん。女王としてお礼をさせて下さい。海底神殿に移住したあかつきには、この天界を差し上げます。文明が進むことでいずれこの島は発見されます。それならば、私たち天女族は誰にも知られない地に居を構えた方が安全なのです。それに、屋敷空間を使えば、天女族の住む地で有ればどこにでも移動する事が出来ますからね」


「そうですね~ わたしもそれが良いと思います~ なぎささんみたいな方がこの地の持ち主になるなら安心ですね~」


「こんな広大で美しい島をですか! とても1人で管理なんてできませんよ!」


「だいじょうぶです。持ち主になっていただくだけで、管理は私たちがやります。屋敷空間を使って天女族が必要なことはやりますので安心してください」





▽ ▽ ▽

 ペルシャとリリスたちは戻って来たアカリと雑談に華を咲かせていた。


「この石は天界に伝わる石なの。仲良くなった友人に1個づつあげるのが習わしなのよ。これが最後の石なんだけどみんなに渡せて良かったわ」


 ピンク色の奇麗な鉱石だった。一人一人に手渡すとリリスがこの石の事を知っていた(外伝:リリス編2話)。


「これは……『ハートブルマニア鉱石』 海底神殿の洞窟で取れる鉱石で、運命の人を見つける指輪の材料よ」


「リリスちゃん。『ハートブルマニア鉱石』って…… 転移石と呼ばれる鉱石ね。特殊な魔法を込めると転移門になると言われているわ」


「アカリさん! それならハルサンでみた転移門はその石が使われているのですかね」


「難しい話は分からないのじゃ! ユニは運命の人を見つけたいのじゃ!」


「指輪を作るのにもう一つ材料がいるのよ。この鉱石と一緒に海底神殿で採掘できたわ」

 

 運命の人を見つける指輪で盛り上がっていた。


「みんなー。お待たせー」


 マーハと共に女性陣の所に戻った。これから、召喚獣リヴァイアサンを呼び出し海底神殿に向かう事を伝える。


「よーし、みんなでベヌスに渡ろうー!」


 

 こうして僕たちは天界を発ちベヌスに向けて旅立つのであった。






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