051:遺跡のある村
宮殿の中は広々として大きな部屋がいくつも並んでいる。まるでヨーロッパの宮殿を思わせる造りで心が躍り、大きなシャンデリアがロマンを感じさせる。
青魔人が持てる分だけプレゼントすると言ったことを素直に受け取り、目につくものをバックにしまっていった。
宝石や装飾品、武具にスクロールにお金。素材であるアダマンチウム、オリハルコン、ダイアモンドや知らない鉱石もしっかりバックにしまった。
深紅の炎を包んだ赤い宝石、漆黒の炎を包んだ黒い宝石など見たことがないアイテムがあった。名前も使い道は解らないが、何かに使う予感を感じさせるのでバックにしまった。
青魔人は『持っていきスギー』と言っていたが、旅の途中で何がどこで役立つか分からないので、申し訳ないとは思ったがしっかりいただいておいた。
オアシスに戻るとペルシャが羽衣を纏っていた。キラキラした淡く青光りする羽衣に見とれてしまう。
「おかえりなさい。無事に羽衣の汚れを落とすことができました。これで私の故郷へ帰ることが出来ます」
体をクルッと一回転させたり、可愛いポーズをとってみたり羽衣が戻った感触を確かめていた。
霊芝草の残りで作ったポーションを渡されたが、故郷へ帰る時の回復薬として使って欲しいとお願いすると、何らかのお礼をしたいと『羽衣』の端を少しカットして僕の手に握らせる。 全て断るのも気を遣わせてしまうのでそのまま笑顔で受け取った。
「あなた方のおかげで無事に羽衣の汚れを取り除くことが出来ました。ここまで手伝っていただいた皆様に羽衣の秘密を聞いて欲しいのです」
ペルシャは天女族で、羽衣の力で空を飛んで天界にある自分の住む国と、この地を行き来している。天界に来た時には改めてお礼をしたい。天女族といっても、人族やワンダ村で見た人犬族と同列なもので特別な種族ではないことを理解してほしい。それと天女族の存在を秘密してほしい事をお願いされた。
「なぎさ。ありがとうな! おかげで助かったよ。これでおいらも安心出来るってもんよ」
声はペルシャの方から聞こえるが、ペルシャの声ではない。声の主をキョロキョロするように探すとペルシャのリボンが勝手に解(ほど)けて絨毯となって飛び出した。その絨毯は屋敷から岬までの移動に使った絨毯であった。
……ワンダに到着してからあの大きな絨毯を見かけないと思っていたが、ペルシャのリボンに変化してようだ。確かに最初に会った時はポニーテールだったが岬への移動中だけはストレートヘアーになっていたことに気づいた。
伸縮自在の魔法の絨毯。意思を持ち空間ストレージ機能付き。霊芝草で作ったポーションをどこに収納していたのかと思っていたら絨毯が収納していた。
「あら。出てきてしまったのですか」
「まあな、なぎさたちは信用できる。おいらの勘は当たることで有名なんだよ」
「有名も何も私以外はあなたのこと知らないと思うのですが……」
無事に霊芝草を使って羽衣をキレイにできた。ただ心残りがある。『初めから必要な薬草が霊芝草と知っていてその場で渡していたらどうなっていたのか』『羽衣を緑水で洗った場合はどうなっていたのか』の2点。結果的にはこの流れが一番良かっただと思う。
ペルシャ・絨毯とはワンワン岬別れ、一度ワンダに戻った。食材と素材を買い足してからバチ王国首都に向けて南へと出発する予定だった……が、
(回想)──
キリがないので帰ったら好きなだけ遊ばせてあげる約束でワンワン岬に向かった
──
しっかり覚えていた。ワンダに2日ほど滞在してからの出発となった。
ワンダからバチ王国に向かうと中継地点として、遺跡の村『ハッコウ』がある。その道中に奴隷を連れた商人や荒くれた冒険者など沢山の人を見かけた。
ララパ(マルチーズみたいな人)によると遺跡の宝を求めて沢山の人が集まっているが、冒険者や商人たちが競うように探しているので、足を引っ張ったり邪魔をしたり治安があまり良くないので気をつけるよう注意されていた。
町へ入る前に荷車をバックにしまってトラブルの種を減らした。
町に入ると警邏(けいら)隊に次のように警告される。
「ここはケンカが多いからお前さんたちのような者は、トラブルに巻き込まれないように傭兵を雇った方が良いぞ」
傭兵は断ったが宿泊先は警邏隊に紹介してもらった安全な宿に予約をとった。宿泊費用は高額だがトラブルに巻き込まれるより幾分もマシである。 ……お風呂付きだし
情報収集は絡まれそうな酒場ではなく、食堂で昼食を摂りつつ集めることにした。しかしトラブルに巻き込まれてしまった……
「おい、あんちゃん。かわいい子連れてるじゃないか! 3人まとめて俺が買ってやるよ。 上玉揃いだから1人白金貨200枚。計600枚でどうだ」
白金貨600枚といえば、この世界で一生遊んで暮らせるほどの金額だ。大切な仲間を大枚を積まれた所で売るなんて事は絶対にしない。
「申し訳ありません、この子は私の大切な家族です。いくらお金を積まれても売ることはできません」
ウタハだけは、ホッとしたような表情をしていた。 ……信用されていなかったのだろうか。
商人は諦めることなく、食堂の中に響き渡る程の大声をあげた。
「奴隷商人ナンシ様が直々に声をかけてやってるんだぞ! ミスリルのランクを持つ私に歯向かうなど許されない事だ。死にたくなければ女を差し出せ!」
「申し訳ありませんが、何と言われてもお断りします」
そう言って3人を連れて店を出た。退店際に店員へ迷惑料として銀貨1枚を置いていった。
しかし、ナンシ率いる悪漢の集団はドスドスと大きな音を立てながら追いかけてくる。
「待ちやがれ。逃げられると思うなよ。おい!やれっ」
集団の中から2人の男が前に出てきた。他の集団とは違う装備に強いオーラ明らかにモブではない。レベルは分からないが雰囲気から手練れなのが分かる。
「あんちゃん。運が悪かったと思って諦めてくれや」
一人の男が仕方無さそうにファイティングポーズを作って拳の合間からこちらを見つめ、右手を前に出してカモンの動作で挑発した。
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